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《今年はイクイノックス》平成ダービー“最強の2着馬”は誰だ? 「16番人気だったライスシャワー」「三冠を逃したエアシャカール」
text by
石田敏徳Toshinori Ishida
photograph byJIJI PRESS
posted2022/05/30 06:01
1992年の日本ダービーの2着馬はライスシャワー(写真右から2頭目)。1着はミホノブルボン
シンボリクリスエス(02年)もゼンノロブロイ(03年)も…
先に挙げた「ダービーの後にGIを3勝以上した馬」のうち、'02年2着のシンボリクリスエス、'03年2着のゼンノロブロイはともに藤沢が管理した馬。4歳時の秋、天皇賞、ジャパンC、有馬記念の“パンチアウト”を決めたゼンノロブロイもかなり強かったが、インパクトの大きさではやはりシンボリクリスエスに軍配があがる。2歳秋のデビュー以降はしばらく、大きな馬体を持て余す面が目立ち、「皐月賞には間に合わなかった」というシンボリクリスエスだが、3歳4月の条件特別で2勝目をマークしたころからグングン良化。主戦騎手の岡部幸雄にかわり、武豊が代打の手綱を取った青葉賞を楽勝し、ダービーに名乗りをあげた。
「ところがレースの後、豊君は『先生、この馬は秋になったらよくなりますよ』というんだ。“ええっ、この馬でもダービーは勝てないの?”と思ったね(笑)」
それでも小さくない手応えを胸にダービーへ臨んだものの、結果は武豊騎乗のタニノギムレットに差し切られて1馬身差の2着。「木っ端微塵の負け方だった」という回想には、打ち砕かれた自信と落胆の大きさが見え隠れする。
シンボリクリスエスが「最強の2着馬」か?
名手の予言は的中した。菊花賞ではなく古馬相手の中距離路線に進んだ秋、シンボリクリスエスは天皇賞を快勝。ジャパンCの3着を挟んで臨んだ有馬記念でも、古馬の一線級を再び蹴散らして勝利を飾り、同年の年度代表馬に選出された。
真の充実期を迎えたのは翌秋のこと。天皇賞1着、ジャパンC3着と着順は1年前と同じでも中身は別物だった。
「(4歳の)秋になってからは調教もどんどんできて、『何だ、こいつ?』と思うぐらい馬がよくなっていった」
引退レースの有馬記念は9馬身差の圧勝(3着がゼンノロブロイ)。怪獣みたいな強さを見せつけて有終の美を飾り、2年連続で年度代表馬に選出された。通算成績は15戦8勝、GI4勝は平成ダービー2着馬の最多勝記録で、年度代表馬の連覇を達成したのもこの馬だけ。種牡馬としてもエピファネイア('13年のダービー2着馬。その後、菊花賞、ジャパンCに優勝)をはじめ、数々の活躍馬を送り出しているシンボリクリスエスはまさに「最強の2着馬」と呼ぶに相応しい存在と映る。
《後編に続く》