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“巨人で戦力外になった男”30歳宮國椋丞の今「球団スタッフ入りも固辞」「チャンスをくれたDeNAに恩返しがしたい」 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byJIJI PRESS

posted2022/05/09 06:02

“巨人で戦力外になった男”30歳宮國椋丞の今「球団スタッフ入りも固辞」「チャンスをくれたDeNAに恩返しがしたい」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

プロ12年目、今年30歳になった宮國椋丞(右)。巨人戦力外→トライアウト→DeNA育成を経て再びプロ野球のマウンドに立った今、思うことは。本人が明かす

 小谷氏の指導は着眼点が独特であり、愛弟子だった三浦監督いわく「コーチとして40年以上の経験がある職人中の職人」だという。「極端な話、上半身が気になっているのに足先や足首といったポイントを修正することで腕の振りが変わったりするんです。今季からコーチングアドバイザーに就任しましたが、きっと気づく投手、変わる投手は多いと思いますよ」

 コーチングアドバイザーという立場ゆえ選手を直接指導することはないが、今年の春季キャンプ中、現在チームに欠かせないセットアッパーとして活躍している伊勢大夢にコーチを通して腰の使い方の修正を促すと、いい効果が現れるようになった。

小谷に問われた「どうしてお前は練習をするんだ?」

 宮國に印象に残っている小谷氏のアドバイスを訊くと、技術的なことに関しては枚挙に暇がないと話す。また、それ以上に心に残り自分の指針になっているのが、投手としての“心構えの面”だと言った。

 若いとき、宮國は小谷氏から次のような質問をされた。

「どうしてお前は練習をするんだ?」

 素直に宮國は答えた。

「上手くなりたいですし、もっと高いレベルでプレーをしたいからです」

 この模範的な回答に小谷氏はかぶりを振って次のように諭した。

「いや、練習をするのは“ひらめき”を見つけるためだぞ」

 練習を重ねることでしか得ることができない“ひらめき”。人から教えてもらうものではなく、自分のなかでしか感じられない小さなヒント。それを掴むために練習をするのだと。

 宮國は述懐する。

「たしかに、そういった“ひらめき”が生まれるのをプロ生活で何度も経験してきたので、自分のなかではすごく大事にしていることなんです。また“ひらめき”って、ひとりで練習していても得ることができるんですよね。だからチームが決まらない時期、ひとりで練習するのはきつかったのですが、その小谷さんの言葉が支えになって頑張れたというのはありますね」

育成から5カ月で支配下登録、9月には古巣に勝利

 宮國はその後、テストを経て3月にDeNAに育成選手として入団し、8月末に支配下登録された。そして9月7日の巨人戦(横浜)で初先発をすると勝利投手となり、復活をアピールした。

【次ページ】 「期待に応えて、恩返しがしたい」

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