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“巨人で戦力外になった男”30歳宮國椋丞の今「球団スタッフ入りも固辞」「チャンスをくれたDeNAに恩返しがしたい」
posted2022/05/09 06:02
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
ゲームの立ち上がり、先発投手が崩れそうになると、宮國椋丞はブルペンで急いで準備を始める。現在の主なポジションは、緊急事態でロングリリーフをすること。壊れかけてしまっているゲームのマウンドに立つことは、決して容易な仕事ではない。
「ただ僕が投げない試合が多くなることが、チームにとってはいいことだと思うんです」
たしかに序盤で宮國の登板がないことは、チームがスムーズに滑り出したことを意味する。宮國のその口調には自虐も衒いもなかった。朴訥とした自然体の言葉――。
「仮に投げることになったとしても、いいピッチングをすることで、相手チームの勢いを切り、ベイスターズに流れを持って来られるように。そこを意識しながら投げています」
真っすぐな眼で宮國は語る。そこにはチャンスをくれた横浜DeNAベイスターズに恩返しをしたいという気持ちと、ひとりのピッチャーとしての矜持が感じられた。
だが、言うは易し行うは難し。5月8日の広島戦(マツダ)では7点をリードされた4回裏にマウンドに上がったが、完全に火が点いたカープ打線の勢いを止めることができず1回6失点。役目を果たせず、この仕事の難しさをあらためて痛感した。
DeNAに移籍して1年「今は本当に日々幸せだなって思う」
DeNAに移籍して1年以上の月日が経った。横浜ブルーのピンストライプもよく似合い、チームにすっかり馴染んでいる。
「とにかく若くて明るいチームですよね。プレーをしていても楽しいというか、そう思えることは気持ちの部分で大きいと思います」
プロ12年目、この4月に30歳になった。若い選手たちからは“グニさん”“グーニー”と呼ばれ、敬愛を込めいじられることもあるという。
「それが心地いいんですよね」
宮國はそう言うと笑った。野球をやれることの嬉しさ、やりがいをひしと感じている。
「若いときは、こんなに毎日、野球をやれる喜びを感じることはなかったのですが、今は本当に日々幸せだなって思うし、だからこそ人一倍チームに貢献したいという気持ちが強いんですよ」
宮國は、今も野球をやれていることを「奇跡ですね」と言う。