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相撲界を懲戒解雇からRIZINへ…貴賢神がデビュー戦完敗でも見せた可能性とは? 対戦した元警察官ファイターが絶賛した「凄い素質」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2022/05/07 17:00

相撲界を懲戒解雇からRIZINへ…貴賢神がデビュー戦完敗でも見せた可能性とは? 対戦した元警察官ファイターが絶賛した「凄い素質」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

4月16日の『RIZIN TRIGGER 3rd』にて総合格闘技デビューを果たした元力士の貴賢神。関根“シュレック”秀樹と対戦した

 そういう貴賢神を、関根は試合前から気にかけていたのだ。単に倒すべき敵ではなかった。関根は元警察官で、もともとはプロレスラー志望。入団したかったUWFインターナショナルが大学4年の時に解散したため「泣く泣く」警察官になったそうだ。だから最初は「荒れて」いた。

「警察官としては問題児でした。だから不良と呼ばれる子たちがヤケになったり、世の中をあきらめちゃうのも分かるんですよ」

 けれど関根はブラジリアン柔術に出会い、あきらめなかった結果としてプロレスラーになれたしRIZINという大舞台で勝つこともできた。年齢を重ねている分、自分の役割にも自覚的だ。

「自分は43歳で警察をやめました。もともとはファンで、ずっとこの世界で暮らしたくて。そんな自分が今、何のためにこの世界にいるか。自分の競技生活はもう残り少ない。その中で少しでも“つなぐ”ことができればと。高阪さんが1人でつないできた灯火を、自分もつないでいきたい。それが今回の試合の意味でしょうね」

「ヘビー級というカテゴリーを絶やさない」

 関根は日本MMAヘビー級の第一人者、高阪剛の名前を挙げた。高阪は関根vs.貴賢神の翌日、同じ会場で行なわれた『RIZIN.35』に出場している。リングスでキャリアをスタートするとUFCで活躍。パンクラスのベルトも巻いた。今はアメリカに拠点を置いて練習する選手も多いが、その先駆けが高阪だった。

 現在52歳。2年ぶりのファイトにして引退試合だ。対戦したのはMMAデビュー戦の上田幹雄。極真空手の世界王者だった“大型ルーキー”だ。

 序盤、ピンチを迎える場面もあった高阪だが冷静に対処。右クロスで上田をダウンさせるとパウンド連打でTKO勝利を収めた。2日連続で、ヘビー級の“新旧対決”を“旧”の側が制したことになる。しかしこれも、単なる勝ち負けではなかった。高阪は上田のポテンシャルを感じ「凄いなぁと思って、それが嬉しい部分もありました」と言う。引退後のビジョンの一つは、指導者として「自分が闘ってきたヘビー級というカテゴリーを絶やさないこと」だと語った。関根の言う「灯火をつなぐ」バックアップをしていきたいということだ。

 選手たちには世界に目を向けてほしいと高阪。世界と闘うために必要なものは何かと聞くと「最初からフィジカルで敵わないからと他の方向に逃げちゃうと、うまくいかないと思います」。高阪はエディー・ジョーンズHC、ジェイミー・ジョセフHC率いるラグビー日本代表で臨時コーチを務めてもいる。近年のジャパンも“フィジカルから逃げない”姿勢で結果を出した。

日本ヘビー級の物語は…

 日本人(アジア人)は重量級では欧米のファイターに勝てない。ボクシングでもキックボクシングでもMMAでもそう言われがちだ。フィジカルの差がありすぎると。そこでどうにか結果を出そうと、長く奮闘してきたのが高阪だった。

 日本のヘビー級ファイターは、圧倒的不利の中で世界に立ち向かうという意味で全員が“同志”なのだと言ってもいい。あるいは全員が“高阪剛を継ぐ者”だ。

 4月16日、17日の2大会を経て、日本ヘビー級の物語はさらに先へと進む。17日にはシビサイ頌真が再起戦で勝利。RIZINの榊原信行CEOは、関根に“門番”として活躍してほしいと期待を寄せる。

 貴賢神はデビュー戦で手痛い敗北を喫した。しかし彼は決して1人ではないし、そのキャリアは彼のものだけではない。上田もそうだ。相撲出身でも空手出身でも、デビューした時点で、いわば「MMA日本ヘビー級・高阪ジャパン」のメンバー。高阪がしてきたように、これからは彼らが世界に立ち向かう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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