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相撲界を懲戒解雇からRIZINへ…貴賢神がデビュー戦完敗でも見せた可能性とは? 対戦した元警察官ファイターが絶賛した「凄い素質」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2022/05/07 17:00

相撲界を懲戒解雇からRIZINへ…貴賢神がデビュー戦完敗でも見せた可能性とは? 対戦した元警察官ファイターが絶賛した「凄い素質」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

4月16日の『RIZIN TRIGGER 3rd』にて総合格闘技デビューを果たした元力士の貴賢神。関根“シュレック”秀樹と対戦した

“元力士”ならではの迫力を見せた貴賢神

 身長175cmの関根に対し、貴賢神は190cm。体重は大きく落としたが、公式計量ではそれでも133.45kgあった。関根は向かい合っただけで圧迫感を覚えたのではないか。

 序盤から前に出て圧力をかける貴賢神。元力士ならではの迫力と言ってよかった。だが、関根も下がりつつサイドステップを使い、頭を振りながらローキック、パンチを繰り出す。貴賢神としては“電車道”を阻まれた格好で、なかなか手が出ない。

 2ラウンドは関根がテイクダウン。グラウンドでコントロールすると、顔面への蹴りを2発決めてフィニッシュした。関根の完勝と言っていいだろう。貴賢神もインタビュースペースで「(試合を)やったことに後悔はないけど、やるべきことがやれなかった後悔はあります」と語っている。

「まだまだですね。技術も精神面も。相撲とは180度違いました。相撲は土俵下からの心理戦。(MMAの)5分3ラウンドの長さの中での駆け引きとはまったく違うので」

関根が貴賢神を“絶賛”した理由

 厳しい洗礼。単純に言うとそうなる。にもかかわらず関根の評価は“絶賛”に近いものだった。

「パワーと規格外の大きさで抑え込めなかった。凄い素質を感じました。スタンドで勝負して親父の拳骨食らわせてやろうかと思ったんですけど、逆に食らわされましたね、息子に」

 タックルにいった際には、脚を捕まえたのだが「かがんだだけで脚がふくらんでクラッチ切られちゃいました」と言う。

 手数はそう多くなかったが、貴賢神の右ストレートには重さだけでなく鋭さがあった。ジャブ、左フックと「前手」の攻撃で相手を牽制する場面も。自分のサイズを活かしつつ、それに甘えない闘い方を志向しているということだろう。

「貴賢神くん、いろんなことがあって心が荒んでたと思います。勇気と涙、愛を教えたかった。相撲界から来た悪魔超人に友情パワーで勝ちました」

 関根は『キン肉マン』の大ファンらしくコメントした。試合後に顔を合わせた貴賢神は「目が澄んでいた」とも。友情パワーは悪魔超人の心をも変える。ちなみに今は女子プロレス団体スターダムの大ファンでもあり、試合後には羽南、天咲光由の入場ポーズを披露。“ファン気質”は彼の武器でもある。

「ざまあみろと言われるかもしれない。でも…」

 一方、貴賢神は「不安だらけではあったけど、やると決めたのは自分ですし。人生で不安がないことのほうが少ないので」という言葉を残している。試合前に強気な発言をしたことについても言及した。

「盛り上げるのも大事ですし、自分もそのつもりでいましたから。やるかやられるかなので、試合前は相手にそういうことも言います。負けたのでいろいろ言われると思います。ざまあみろと言われるかもしれない。でも自分は変えないです」

【次ページ】 「ヘビー級というカテゴリーを絶やさない」

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