酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「また審判叩きが始まるのか」佐々木朗希と白井球審の件で思い出す“暴行・恫喝の過去”… ロッテ元守護神が判定技術を称賛するワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/05/04 11:04
思わぬ側面で話題となったプロ野球の審判だが、細かな1つ1つの判定をジャッジしているのは事実だ
目に余るようなミス、度重なるミスがあった場合は、試合とは別に選手、チームと審判団の話し合いがもたれることはあってもよいが、競技中は審判に絶対の権限がある。
最近はMLBの影響で、一軍の試合ではビデオ判定が行われるようになったが、これは「審判のジャッジが信頼できないから導入された」わけではない。ビデオ機器の進化で、細かなプレーがより精細にわかるようになったことで、疑念を残さないために“限定的に”導入されたものだ。それでも最終的なジャッジは審判が行う。
最近はAI技術が進化し、MLBでは「AI審判」の導入も検討されている。今回の白井球審の一件で「NPBでもAI審判の導入を」との声が上がるかと思いきや、そうではなかった。むしろ審判の権限、立場を尊重すべきという声もあった。潮目が変わったのかもしれない。
ダルビッシュ、荻野忠寛が審判をフォローする投稿
筆者が注目したのは野球選手、元選手から「審判の仕事の凄さ、大事さ」を訴える声が上がったことだ。以下、2人の投手のSNSでの発信を抜粋する。
ダルビッシュ有「簡単に言うと、審判はみなさんが思っている何万倍も難しいです。(中略)審判は褒められはしないけど、批判はされる。それが当たり前とされるのが審判なんですよね」
荻野忠寛「プロ野球の審判の技術は本当にすごい。特にストライク・ボールの判定はボール半個分以下まで見極められる。プロ野球選手が選ばれた人なら審判も選ばれた人。誰にでもできる仕事ではない」
荻野さんが力説する「プロ野球審判の技術の高さ」
この投稿をした、元ロッテ守護神の荻野忠寛さんに改めて話を聞いた。
「プロ野球の審判の技術は本当に高いです。 例えばストライク・ボールの判定。感情や雰囲気に流されず自分のゾーンを崩しません。アマではボール1個分くらい外れていてもキャッチャーがいい音を鳴らして捕ればストライクになることがありますが、プロの審判はそれがほとんどありません。自分のゾーンが確立されています。
それはキャンプの時からチームに帯同し、何千球、何万球と見てきているからだと思います。今回のようにランナーが盗塁した時や、キャッチャーがランナーを気にして立ち上がりながら捕球した時など、アマチュアの審判ならストライク・ボールが今までのゾーンと変わってしまいます。 でも、プロ野球の審判は正確な判定を下すことができます。
今回もあの1球だけ切り取ればストライクだろうと思う人も多いかもしれませんが、試合を通じて低目のボールには厳しかった。プロ野球の審判のレベルはアマチュア野球の審判には存在しないレベルだと思います。
プロ野球の審判を『下手だから辞めろ』というのは、プロ野球選手に『大谷翔平選手より野球が下手なんだから辞めろ』と言っているようなものではないでしょうか。もちろん人間なので能力に差はあるでしょうが、技術の高さでは代わりがいない存在だと思っています」
荻野さんは今回のジャッジについて、こう考えている。