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[教科書を超えた走攻守]イチローの野球を知る究極のプレー6選(後編)

posted2022/04/16 07:00

 
[教科書を超えた走攻守]イチローの野球を知る究極のプレー6選(後編)<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph by

Naoya Sanuki

打てば誰よりもヒットを量産し、走っても守っても、そのスピードと技術で観るものを魅了し続けた。彼が演じてきた数々の名場面から“ザ・イチロー”のプレーを厳選!(全2回の後編/前編へ)

 '09年9月18日、シアトル。イチローはメジャー初のサヨナラ本塁打を放った。相手はヤンキース、マウンドには歴代最多の652セーブを記録したマリアノ・リベラがいた。1対2の9回2死二塁。初球だった。内角92マイル(約148km)のカットボールを振り抜いた打球は高々と舞い上がった。『右翼席』に弾む歓喜の一発にも、イチローは表情ひとつ変えない。いつものようにクールに決めた。だが内心は違った。

「できるだけゆっくり回ろうと。だって、初めてだしね。なかなかヤンキースの試合でね。そのほうがいいでしょう。だって、もったいないじゃん」

 リベラはこのとき39歳、通算522セーブ、この試合前まで36試合連続セーブの無双ぶりも発揮していた。対戦成績はここまで10打数2安打。イチローはご機嫌だった。

「いやぁ~、なかなかないでしょう」

 記者陣に「狙っていたのか」と問われた。

「まぁ、頭にはあったぐらいかな。もう、なんか勢いつけていったれ思うて。あそこ(右翼席)に打ってんだから、『それを思っていたら、いかないわね』。まぁ、カウントにもよるしね」

 イチロー対リベラの戦いが凝縮された言葉だった。イチローの打撃の奥義。それは相手投手のウイニングショットを仕留めることにある。

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