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《皐月賞に進撃》オニャンコポンの才能を瞬時に見抜いた菅原明良の“不思議な感性”とは?「オニャンコに巡り会えたことが幸せ」
posted2022/04/16 17:00
text by
田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai
photograph by
Kiichi Matsumoto
'19年夏。北海道苫小牧市で行われた世界最大級の競走馬セリ市セレクトセールに、のちにオニャンコポンと名付けられる生後5カ月の幼駒が上場された。
「正直、第一印象は残っていないんです」
そう本音で語るのは美浦トレセンで同馬を管理する小島茂之調教師。整頓された書棚から当時のセリ名簿を取り出した。
「自分は必ず下見を3回以上してメモを取っています。“胴が長い。歩きはいい”と書いてありますが“線が細い”と。ヒョロッとした馬は馬主さんに好まれないので、積極的には推薦しませんでした」
父エイシンフラッシュの産駒は重賞未勝利。非力に映るその幼駒に興味を示すホースマンはいなかった。
「ビビッときた」落札額は“お値打ち”の800万円
ただ、小島が同行していた馬主・田原邦男は購入に意欲的だった。この馬が186番目(欠場含む)に登場するまで、田原は買おうとした馬を競り落とせなかった。そんな中で、「この馬にビビッときたようです」。最低価格800万円から始まった競りは、田原の第一声のみが響いて終了。1億円超え連発のセレクトセールで800万円は破格。この日落札された192頭の中で4番目に安い取引額だった。
2年後、そのサラブレッドはオニャンコポンと命名される。由来はアカン語(西アフリカの言語)で“偉大な者”。猫やアイドルを想起させる語感の良さや、人気漫画『進撃の巨人』、ゲームアプリ『モンスターストライク』に同名キャラクターが登場することからネット上で大きな話題となる。
これまで小島厩舎で活躍した田原の所有馬は秋華賞馬ブラックエンブレム、プロレタリアトなど二枚目の名前ばかり。最初は戸惑った小島だが、すぐに気に入った。