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イタリア2大会連続W杯予選敗退の真相 「世界の破滅」と激怒ムードだった前回より、さらに深刻な問題は…〈欧州王者の急転落〉 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2022/04/08 17:01

イタリア2大会連続W杯予選敗退の真相 「世界の破滅」と激怒ムードだった前回より、さらに深刻な問題は…〈欧州王者の急転落〉<Number Web> photograph by Getty Images

2大会連続でW杯を逃したイタリア代表。若い世代にとってアズーリは「常連国」のイメージがなくなっていくのかもしれない

 サッカー界のカレンダーはますます過密化が進む。

 コロナ禍の影響による所属クラブのスケジュール厳格化や突発的な感染と隔離による体調変化、蓄積疲労による選手たちのパフォーマンス不足は、あらゆる国の代表チームに起こりうる落とし穴だ。イタリアはその陥穽にはまった。

「俺は、EUROで優勝した夜より……」

 マンチーニは打てる手はすべて打ち尽くした。

 EURO優勝後、一度解体したチームをゼロから組み立て直す時間は、シーズン中に組まれた予選の間にはもう見つけられなかった。理念とスタイルは残っていても、チーム全体でシンクロしていたプレーのリズムは一度失ってしまったら、日数をかけた合宿と実戦での勝利を通さない限りもう戻らない。

 北マケドニアに敗れた後のロッカールームで、マンチーニは慟哭する選手たちに声をかけた。

「俺は、EUROで優勝した夜より、負けた今夜の方がお前らのことをより大事だと思っている」

「世界で最も無意味で悲しい」トルコ遠征

 アッズーリは再び蹉跌した。だが、世界は破滅していない。

 敗退決定から5日後、プレーオフ・トーナメントに敗れたトルコとの試合が行われた。放映契約とFIFAランキングのためだけに行われたトルコ遠征を伊紙はこぞって「世界で最も無意味で悲しい試合」と書き捨てた。

 気を抜いた守護神ドンナルンマの凡ミスにより2失点したが、イタリアは22歳のFWラスパドーリが2得点するなど3ゴールを奪って逆転勝ちで再出発した。

 37歳の主将キエッリーニは、代表出場キャップを歴代5位タイの116試合に伸ばした。6月1日にロンドンで欧州王者イタリアと南米王者アルゼンチンが雌雄を決するスペシャルマッチ「フィナリッシマ」を代表引退の花道にするらしい。

 6月4日からは22-23ネイションズリーグが開幕する。新アッズーリはドイツ、ハンガリー、イングランドの3カ国と10日間で4連戦という凶悪な変則スケジュールに立ち向かう。

 マンチーニに老け込む暇なんてない。4年後なんてすぐやってくる。

「私の目標はEUROとW杯で優勝することだ。欧州王者にはなったから、世界一になるのをほんの少し先送りしただけだ。6月から始まるネイションズリーグでは、より若手を積極起用していこうと思っている。願わくば、彼らにクラブでもよりハイレベルの経験を積んでもらいたい。もしカタールに行けていたら、このイタリア代表は本大会で優勝を争えるはずだったと思う」

 W杯優勝を口にできる監督もチームも、世界中探してもそうはいない。

 秋になったら「あれ、何でイタリアがW杯に出てないの?」と、誰もが素知らぬ顔できっと言い始めるだろう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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