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3連単278万円超の大波乱に…8番人気ナランフレグはなぜGI高松宮記念で突き抜けたのか? 勝負を分けた“インコースの選択”
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2022/03/28 11:50
3月27日の高松宮記念で人馬ともにGI初制覇となったナランフレグと丸田恭介
騎手デビュー16年目、35歳の丸田にとっても、これが初めてのGI勝利であった。スタンド前に戻った丸田は、馬上で男泣きした。
「GIに乗る経験が少ないなかで、こういう日のために、何度もイメージしてきたので、この日をナランフレグとともに迎えられて本当に嬉しいです。頑張ってくれたナランフレグはもちろん、乗せつづけてくれたオーナーや先生、携わっている牧場の方や厩舎スタッフみんなにお礼が言いたいです。本当にありがとうございます」
開業30年目の宗像調教師にとっても、これがGI初勝利。丸田は、デビューした2007年から18年まで宗像厩舎に所属していた。師匠に大きな勝利をプレゼントできたことについて、丸田は、「それが一番嬉しいです……」とインタビューで言葉を詰まらせた。最近の競馬界ではあまり見られなくなっていた師弟の強い結びつきに、もらい泣きした人は多かったのではないか。
8番人気のナランフレグ激走の最大の要因は?
馬場状態、馬の調子、枠順、展開、コース取り、追い出しのタイミング――すべてが噛み合い、手にすることのできたタイトルだった。
前日の雨の影響で中京の芝コースは重馬場のコンディションだった。しかし、当日は好天で、メイケイエールの池添謙一やグレナディアガーズの福永祐一がコメントしていたように、芝が内から乾いて、内枠有利の馬場になっていた。
ナランフレグが引いたのは1枠2番。重馬場にしては速い流れのなか、後方の内で脚を溜め、直線で馬の間をこじ開けるように末脚を爆発させた。
「阪神のオープン(3走前のタンザナイトステークス1着)でもこういう形をこなしてくれていたので、自信を持ってインコースに行きました。最近はインコースからさばくことも板についてきて、それを十分に生かしたナランフレグを褒めたいですね」と丸田。
ゴール前でレシステンシアとトゥラヴェスーラの間を割るとき、スペースが十分ではなく2完歩ほど追う手を止めて待機する局面があったが、ナランフレグはスペースができた瞬間そこに割って入り、他馬と馬体をぶつけ合っても怯むことなく、突き抜けた。前走までの28戦のうち20戦で丸田が騎乗し、教えつづけてきたことが、大一番で実を結んだ。