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「看護師さんにはすっげぇ怒られて(笑)」 アジャコング51歳が復帰の裏に、“ケガとの壮絶な闘い”があった…語った“両親への感謝” 

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伊藤雅奈子

伊藤雅奈子Kanako Ito

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/04/01 17:00

「看護師さんにはすっげぇ怒られて(笑)」 アジャコング51歳が復帰の裏に、“ケガとの壮絶な闘い”があった…語った“両親への感謝”<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

手術を経て、大怪我からの復帰を果たすアジャコング

――武藤選手は18年に両膝の人工関節置換術を受けて、復帰までに1年3カ月かかっています。

アジャ そのころより今は医療技術が日々進歩していますけど、武藤さんができたということは、同じプロレスラーとして努力次第で、できないことはないんじゃないかって、そこは励みになりました。私はまだ現役真っ最中で、筋力もある今のうちなら大丈夫じゃないかという主治医の判断があったので、去年10月に手術に踏みきった。今が最低の状態、これ以上悪くなることはないだろうと思っていたので、手術をする不安はなかったです。

医師から「これで歩いていることが奇跡だ」

――当時の痛みを何かにたとえるとしたら……。

アジャ たとえようのない痛み。トイレに行くのも5分、10分かかっていて、立ちあがって、1歩を踏みだすんだけど、痛くて次の1歩を出せない。今までプロレスでいろんな痛みを味わってきたので、痛みに強い人間だと思っていたけど、我慢の限界を超えた痛みはこういうものなんだなって。レントゲンを診た主治医は言ってましたね、「これで歩いていることが奇跡だ」って。

――歩けなくなるかもしれないという不安はありましたか?

アジャ それはないです。回復してスタスタ歩いてるお年寄りをたくさん見てきたので。不安でいうと今……ですね。半年ぶりに受け身を取って、普段どおりのリング練習はしていますけど、これが試合となってきちんと動ける保証はないので。あと、復帰戦後にコンディションがどうなっているかもわからない。復帰戦はゴールじゃないので、復帰して、そこからの先行きがまだ見えないなぁと。そういう不安はあります。

――大ベテランとなった今まで、大怪我による長期欠場がなかったほうがむしろ奇跡。主治医から言われた言葉で印象に残っているのは?

アジャ 手術をした翌日から、車いすの練習をはじめますということだったんですね。看護師さんが持ってきてくれた車いすに、自分で乗り移った瞬間にびっくりされて、「そんなにスムースに移った人を初めて見たんです」と。その日の夜にトイレに行きたくなって、試しで立ってみたら、立てたんです。そのままつたって行けたんで、「先生、すごいじゃん。1日で立てるようにしてくれた!」って思って、翌日に看護師さんに報告したら、「勝手なことをしないでください!」ってすっげぇ怒られて(笑)、主治医がすっ飛んできた。「なんで歩けるの?」「いや、歩けるようにしてくれたの、先生ですよね」と。「僕の範ちゅうではわからない。手術の翌日に歩いた人を見たことがない」と言われました。

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