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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
靭帯断裂は「むしろおいしかった(笑)」スターダムの最恐ヒール・刀羅ナツコの“黒い再生計画”「みんな私の掌の上だ」《特別グラビア》
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/03/24 17:00
スターダムのヒール軍団「大江戸隊」を率いる刀羅ナツコ。昨年7月のタイトルマッチで故障した左ヒザも、順調に回復してきているという
「控室に戻るまでは、刀羅ナツコのままでいたかった」
もう一度、昨年7月4日の横浜武道館でナツコが怪我をしたときにシーンを戻そう。
「今にして思うと、あれはむしろおいしかったな(笑)。左足を怪我しただけで、あんなにニュースで取り上げられてさ。なんだ、今はプロレスラーやっているんだ、って知人もいた。5年以上も連絡がなかった人からも連絡があった。怪我をして有名になれたよ」
あの日、座り込んだままのナツコはマイクを握って「試合、やらせろ!」「やるって言ってんだろ!」と怒鳴った。
「ただうつむいて、うずくまっていたら、客が引いちゃうからな。試合続行できるかできないかの決定が出るまで、変な空気になる。私もファンだったからわかるんだ。ざわついているし、みんな集まってくるし、立ち上がれなくても闘志を見せなくちゃいけない。弱いところを見せたくなかった。控室に戻るまでは、ずっと刀羅ナツコのままでいたかった。動けなくても、心は死んでいないんだよ、というのを見せたかった」
その前に、赤いバラの花をくわえたナツコがコーナーポストから場外に飛んだ。
「最初から狙っていたわけじゃない。飛ぼうと思った瞬間、たまたま解説席にあったバラが目に入った。そんなに大事にしているなら、その気持ちを踏みにじってやるのがヒールだろ? やってやろうと思った」
机の上には林下が横たわっていた。ナツコの試合で、机がクラッシュするのはこれが3度目だ。
「最初はTCS(トーキョー・サイバー・スクワッド)の解散をかけてやった試合。相手がジャングル叫女と小波。私がダイブしようと思っていたのに、その机の上でジャングルにパイルドライバーやられて、頭からグサリと刺さった。中身が飛び散る衝撃。死ぬかと思ったよ(笑)。2回目はジュリアと反則も何でもありの『ノーDQマッチ』をやって、コーナーから飛んで叩き割った。そして、3度目があの時の詩美戦。私がめちゃくちゃウェイト増やしていた時で、しかも場外に飛んだから、机の上にいるはずの詩美が、机に埋まっていた。試合中だけど、はまり過ぎていて、思わず笑いそうになった。私、やっぱり重いんだ、って(笑)」
試合はドクターストップで打ち切りになってしまった。ナツコの中にはモヤモヤが残っている。
「復帰したら、もちろん詩美とはやりたい。あの続きじゃないけれど、自分はスッキリしていない。詩美がどう思っているかは知らないが、私はあの日で止まっちゃっているから」