野球クロスロードBACK NUMBER
《聖隷クリストファー落選で出場》大垣日大が見せた逆風下の戦い方…名将・阪口慶三77歳「『やりづらい』は失礼にあたるからな」11年前のセンバツでも…
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/23 17:02
大垣日大を率いる阪口慶三監督。名将は“やりづらい”初戦をどう戦ったのか
指揮官の目論見通り、2回1死から四球で出たランナーが盗塁。2死二塁から監督の孫である高橋慎のライト前への先制打など、この回2点を挙げた。3-1で迎えた7回には、1点を追加した直後に一塁ランナーが牽制球で刺される場面もあったが、試合を通じて2盗塁、4犠打と手堅く、次の塁を狙う姿勢を徹底。相手の攻撃意欲を削ぐ点についても、先発の左腕・五島幹士が2安打1失点、18奪三振と快投を演じ、監督の期待に応えた。スコアは6-1。主導権を握ったまま快勝した。
11年前にも…「相手がどこであろうと」
相手がどこだろうと大垣日大の野球を貫く。それは、阪口の敬意の体現でもある。
「只見高校さんとの試合でしたが、展開ひとつでどちらが勝ってもおかしくない。これが高校野球の姿なんです」
これが高校野球の姿――。
あの時も阪口は、同じことを言っていた。
前回出場となった2011年だ。この年も、大垣日大に逆風が吹いていた。
初戦の相手は東北高校。東日本大震災の被災地である宮城県の代表校で、満足のいく準備ができないままセンバツを迎えたことが判官贔屓の世論の同情を誘った。
大垣日大にとっては戦いづらい相手である。阪口も胸の内ではやりづらさを感じていたが、そんな自身の感情を打ち消す意思表示も込め、抽選会後に選手たちにはっきりと告げた。
「相手がどこであろうと、全力で戦うことが礼儀だぞ。『やりづらい』のような余計なことは、勝負の世界で言うべきじゃない。それは失礼にあたるからな」
「これぞ高校野球って姿を見せようぜ!」
試合当日。スタンドの雰囲気から、ほとんどが東北を応援しているのだろうと、阪口は察した。だからベンチで、もう一度「全力勝負が礼儀だぞ」と念を押し、檄を飛ばした。
「これぞ高校野球って姿を見せようぜ!」