濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
天咲光由19歳が観客のハート撃ち抜く“破格”デビュー! 靭帯断裂から復帰の飯田沙耶は「自分は泥団子」 スターダム“生え抜き”たちの未来
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/03/20 17:03
3.11品川大会でデビューした天咲光由(左)と、ケガからの復帰を果たした飯田沙耶
復帰戦で見せたジャンピング・ダブルチョップの意味
初参戦となるJUST TAP OUTの稲葉ともか&Aoiとの復帰戦。回転式の垂直落下ブレーンバスターでAoiから3カウントを奪った。序盤にはケガをした時と同じジャンピング・ダブルチョップも。それを出すことが復帰の儀式だったのだろう。
「ヒザを気にしながらの試合になるのか、アドレナリンで関係なくなるのか。やってみないと分からないです」
そう言っていたが、実際には後者だった。ドクターからゴーサインが出てから最短のタイミングでの復帰戦。脚には負傷前ほどの筋肉は戻っていない。ギリギリ試合可能という状態だから余計に緊張していたが、入場ゲートで叫んだ瞬間に吹っ切れたそうだ。一挙手一投足に送られる観客の拍手にも背中を押された。本人言うところの「飯田魂大爆発炸裂」だった。
一人称は「あっし」。対戦相手のことは「きさん」と呼ぶ。柔と剛なら完全に剛。流れが速いスターダムでも、結局は飯田のポジションを奪うような存在は出てこなかった。
「スターダムの選手は華やかでキラキラしてますよね。みんなが宝石だとしたら、自分は泥団子ですよ。みんなプリキュアみたいだけど、自分だけ番組が違うみたいな(笑)。色で言ったら艶よりマット。だから目立つということもあると思うので。自分は他の選手と真逆の存在でありたいですね」
「スターダムは新人を育てない」という声もあるが…
飯田は林下と同じ10期生。2017年から2019年にデビューした林下、ひめか、舞華、上谷沙弥は“黄金世代”と呼ばれる。2019年1月デビューの飯田も同じ世代だ。
「みんなシングル、タッグのベルトを巻いてますよね。自分は(新人王座の)フューチャーで止まっているので。黄金世代の活躍は欠場中も気にしてました。早く追いつかなきゃいけない。負けてられないです」
飯田の欠場期間中、デビュー目指して練習を積んでいたのが天咲だった。地方巡業が行なわれている間は残った飯田たちだけで道場に集まる。飯田にも天咲にも焦りがあり、爆発させたい思いがあった。
秘蔵っ子のデビューと個性派の復帰。スターダムの戦力はさらに分厚く、豊かになった。スターダムはよそから選手を取ってくるばかりで自前の新人を育てていないという声もある。だが2018年から2020年にかけて林下、飯田、上谷、レディ・Cがデビューし、そこに天咲も加わった。
“移籍組”は話題になりやすいが、その新人育成手腕も注目されていいはずだ。スターダムの流れは、3月11日を境にますます速くなっていく。その流れの源には、飯田や天咲が過ごしたような道場での地道な日々がある。
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