林下「本当の妹みたい」ユニットQQへ勧誘

「デビュー戦から注目されて、自分もそうだったなと。でもプレッシャーに負けるような子だとは思ってなかったです。もともと運動神経がいいし、表情や動き、空気から“勝ちたい、プロレスを頑張りたい”という気持ちが伝わってきました」

　試合後、林下は天咲を自身が属するユニット「Queen's Quest（QQ）」に誘う。天咲も「最初からQQしか考えてませんでした」。デビュー即ユニット決定だ。林下にとって、天咲は初めてできた“年下の後輩”。「本当の妹みたいなんです」と頬を緩ませる。可愛くて仕方がないが、それだけでなく即戦力だと考えていたのだろう。実際に試合をして、それを確信してのQQ勧誘だ。

試合後QQのメンバーに迎えられ、ユニット加入が決まった天咲　©Norihiro Hashimoto

スターライト・キッド戦で見せた気迫

　翌日、ベルサール高田馬場大会では、ヒールユニット大江戸隊との対抗戦5vs.5マッチに出場することになった。抽選の結果、天咲は今をときめくスターライト・キッドと対戦することに。しかも対抗戦の5試合目＝大将戦、デビューから2試合連続でのメインイベント。抽選によるものとはいえ、破格と言うしかない。

　4戦目まででQQの2勝1敗1分。自分が勝つか引き分ければチームの勝利が決まる。プレッシャーしかないような状況で、天咲はQQの象徴であるフラッグを担いで入場する。その姿は前日よりもさらに落ち着いていた。と同時に感情の伝わり方も増していた。最後はテキサスクローバーホールドでタップアウトしたが、印象的だったのはキッドを繰り返し抑え込んで3カウントを狙った場面だ。技は技として十分に持っているのだが、それ以上に“どうにかして勝ちたい”という気迫が目立った。

デビュー2戦目ではスターライト・キッドと対戦。渾身の抑え込みで3カウントを狙う　©Norihiro Hashimoto

　デビュー3連戦目、3.13後楽園ホール大会では、同い年の先輩AZMとタッグを結成した。「02line」チームと名乗ったのは天咲からだ。2002年生まれを意味する表現で、K-POP発祥。いかにも新世代という感じだ。中野たむ＆月山和香と対戦してAZMが勝利。天咲は初めてレフェリーに手を挙げられることになった。

「連戦がこんなに大変だって、やってみて初めて分かりました。やっぱり緊張しました。でもそれ以上に楽しかったです」

デビュー3戦目ではAZMと「02line」を結成　©Norihiro Hashimoto

　デビュー戦からの3日間を、そう振り返った天咲。溌剌とした動きの裏には、ため込んだ気持ちもあった。実は昨年の段階でプロテストを予定していたのだが、ケガで延期になってしまったのだ。本人には「出遅れた」という意識があった。「挽回するためにも頑張りたいです」と語っていたのはデビュー戦に向けた記者会見後のインタビューだ。そうした背景があっての、デビュー戦からの全力疾走だった。

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