その時点では、年末にクラブワールドカップが予定されていました。ここで薬を飲んでしまって、復帰したときにドーピングで大会に出られなくなるのが、一番かっこ悪いと思ったんです。ですから、必死で痛みに耐え抜きました。最初の3日くらいは、本当に痛くて仕方がなかったです。

　食事については、ほとんど毎日、完全栄養食のパンを食べていました。もちろん、ずっと下を向きながら。トイレに行くときもそう。病院から支給された枕が革製で、固くて痛かったので、宮島さんにビーズの入った柔らかいクッションを買ってきてもらいました。それでずいぶんと楽になりましたね。

　そんな生活が、2週間ちょっと続きました。ホテルを出てから、都内のマンスリーマンションを用意してもらって、しばらくはそこから病院に通いました。

　結局、右目については「これ以上の改善は難しい」、左目については「経過観察」ということになりました。

　右は、完全な失明というわけではなくて、ある程度の光を感じることはできます。

　左は、ぼんやり見えている程度です。視力で言ったら、0・01もないくらい。目の前にある料理も、そこにあることは把握できるんですが、どんな料理なのかは口に運んでみないとわからない感じです。

　実は怪我をした直後、痛みにもがきながら「陸上でパラリンピックを目指そうかな」って考えていたんです。僕はもともと、走るほうが得意だったので。でも、ハミルトンの病院に向かう途中で、ふと思ったんです。

　左目が多少は見えているなら、サッカーできるんじゃないか？　もともと右サイドバックだし、なんなら右の視力はいらないんじゃないか──って。

　そこから、クラブワールドカップ出場に向けた、壮絶なリハビリが始まりました。＜前編から続く＞

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「ゼリー状の“それ”が自分の右目だと信じきっていた」失明危機に陥ったフットボーラー・松本光平が語る“光を失った瞬間”の激痛