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右目の視力を失っても「眼球が破裂しなかっただけ、僕の勝ちだな」…松本光平(32)を支える“異次元のポジティブ思考”とは
text by
松本光平Kohei Matsumoto
photograph byAFLO
posted2022/03/15 11:01
2015年初頭、オークランド・シティ(ニュージーランド)でプレーしていた松本光平は、練習試合で日本代表と対戦。本田圭佑らと記念撮影を行った
言い方としては、わりと投げやりな感じでした。それでも「やるかどうかはきみ次第」というなら、復帰は決まったようなものです。それで、手術も受けていないのに周りの人たちに電話したんですよ。「復帰が決まりました! ありがとうございます。ご心配をおかけしてすみませんでした」って。
手術の結果ですか? 留め金が直撃した右目は、黄斑部に空いた穴が1カ所と言われていたんです。それでも厳しい状況でしたが、実際に手術してみたら穴が3カ所あって、先生からも「こんな症例は見たことがない」と。あれだけの衝撃であれば、普通なら眼球が破裂しているそうで、先生も「奇跡だ」と言っていました。
結果的に、右目の視力は戻りませんでした。それでも眼球が破裂しなかっただけでも、僕の勝ちだなって思いましたね。
手術後4日目からは、遮光カーテンのある病院指定のホテルで過ごしていたので、昼も夜もわからない生活が続きました。真ん中に穴が空いた枕で、うつ伏せの状態をずっとキープしていたんです。
手術後の処置として約2週間、24時間うつ伏せの状態で過ごさなければなりませんでした。顔を上げてしまうと、目に入れたガスが抜けてしまって、また手術をしなければならなくなります。ですから死ぬ気で、うつ伏せ状態を続けました。
それ以上につらかったのが、目の痛みです。手術が終わった直後は、クギでえぐられるくらいの激痛に苦しみました。病院からは、痛み止めの薬が処方されたんです。でも、それを飲んでしまうと、ドーピング検査に引っかかるんですよね。
ほかの薬に替えてほしいって頼んだんですけど、「先生の指定なので替えられません」と言われて。事情を説明したら「嫌なら飲まなくていいです。我慢できるならそうしてください」と言われたので、我慢することにしました。