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古賀紗理那“雄叫びスパイク”から読み解くリアルな現在地「今は代表のことは頭にない」のに「もっとバレーがうまくなりたい」
posted2022/02/25 17:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiichi Matsumoto
1月30日、大田区総合体育館。いい場面で、いい声が響いた。
ただしそれはベンチからでも、スタンドからでもない。打った張本人が、スパイクヒットと同時に発した声だった。
「おらー」だったか「うらー」だったか、何と叫んだかは覚えていない。だが、なぜそこで声を出したか。そこにははっきり理由があった。そのシーンを振り返るのは声の主、NECレッドロケッツの古賀紗理那(25歳)だ。
「私、声を出して打つ時は絶対に決められる自信がある時だけなんです。あの場面はここが勝つためのポイントだと思ったし、スパイクを打つ時にはいつも頭を使うんですけど、その時は余計なことを考えなくても“絶対に決まる”、“どこへ打っても決まる”って自信があった。無意識だったんですけど、自分でも映像を見返したらびっくりするぐらい大きな声で叫んでた。この1本だ、という気持ちがそのまま出たプレーでした」
プレーから伝わる「勝つ」という覚悟
Vリーグ女子大会はレギュラーラウンドの終盤に差し掛かったとはいえ、“この1本”が飛び出したのは、優勝を決める試合でも、ファイナルステージ進出を決める試合でもなく、トヨタ車体クインシーズとの今季2戦目となるホームゲームでの1シーンに過ぎない。
リーグは新型コロナウイルスの感染拡大で中止が相次ぎ、NECでも新型コロナウイルス陽性者が確認され、前節までホームゲームも開催できるか危うい状況だった。さらに、わずか数日の全体練習を経て臨んだ前日29日の対戦では、今季苦戦が続くトヨタ車体にストレート負けを喫し、リーグ2勝目を献上していた。そんな状況を差し引いても、古賀の1本と声は、なぜそれほどまでに観る人に強い印象を与えたのか。
そこには「何が何でも勝利をつかむ」という強い決意と覚悟がにじみ出ているように見えたからだ。