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“10戦10勝の22歳”は堀口恭司も跳ね返されたUFCの頂に立てるのか? フォトグラファーが撮り続けた「日本人の王座挑戦20年史」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2022/03/01 17:10

“10戦10勝の22歳”は堀口恭司も跳ね返されたUFCの頂に立てるのか? フォトグラファーが撮り続けた「日本人の王座挑戦20年史」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2015年4月、歴代屈指の名王者と称されるデメトリアス・ジョンソンに挑戦した堀口恭司。この試合がUFCでの唯一の敗戦となった

「やりますから」堀口恭司の覚悟も届かず

 格闘技に興味がない方でも、堀口恭司の名前は聞いたことがあると思う。彼は修斗でプロデビューしてからUFC、RIZIN、Bellatorと格闘技のメジャー団体で試合をしている現役選手だ。RIZINとBellatorではベルトを巻いた経験のある、トップ中のトップである。

 彼がUFCのベルトに挑戦したのは、2015年4月25日、モントリオールでの試合だった。対戦相手のデメトリアス・ジョンソンはパウンド・フォー・パウンドと呼ばれるフライ級の最強王者で、現在もUFCの連続最多防衛記録をもつ。業界関係者からは、史上最も偉大なMMAファイターの一人という評価を受けるほどだ。

 試合の2日前に記者会見が行われたが、日本人の姿は私以外には見当たらなかった。堀口は私を見つけると満面の笑みを浮かべた。

「長尾さん、来てくれたんですね!」

 そして真っ直ぐに私の目を見て、「やりますから」と力強く宣言した。

 堀口のタイトル挑戦は、ジョンソンが相手なら分が悪いことは百も承知だった。しかし、格闘技ではあらゆることが起こりうるし、私も番狂わせを何度も見てきている。そんなことを考えながら、堀口の入場シーンを撮影した。

 1ラウンドから軽快な動きを見せ、調子はかなり良さそうな堀口。相手は手数も少なく、このままならベルトに手が届きそうな予感がした。2ラウンドになり、試合が動き出した。打撃の間合いを見切ったジョンソンが主導権を握るようになる。それ以降は堀口につけ入る隙を与えず、最終ラウンドにはジョンソンが腕十字で試合を決めた。

 筆者は「何でもあり」と呼ばれた総合格闘技の黎明期からその進化と共に歩み、「MMA」という競技として完成された現在も撮影を続けている。UFCはメジャースポーツとなり、1試合で1億円以上のファイトマネーを手にする選手もいる。UFCの大会の増加に伴い、私はオフィシャルの仕事から離れたが、日本人王者の誕生を撮影するのは、自分の義務だと勝手に思っている。だからその可能性がある限り、何時でも何処へでも行くつもりだ。

 日本人選手がことごとく跳ね返されたUFC王座という高き頂。しかし、その栄光を手にする者は必ず出てくる。その瞬間に立ち会いたい。希望を胸に、私はこれからもシャッターを切り続ける。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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