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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
27歳で戦力外「希望しかないんですよ」…元DeNA乙坂智が語る“メキシコ挑戦のウラ側”「振り返ってみると、それじゃ結果は出ないなって」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byShiro Miyake
posted2022/03/02 11:02
昨季に10年在籍した横浜DeNAベイスターズを退団し、今季からメキシカンリーグ・レッドデビルズでプレーする乙坂智
「プレーヤーとしては、やっぱり少しでも高いステージに行くのが目標だし、それが野球をつづける理由でもあります。人生の目的として考えると、僕の取り柄は決めたらすぐ行動することなんですが、それによってこれまでいろいろな経験をすることができました。今後もそうあるつもりなので、こいつの人生ちょっと面白いなって思ってくれる人がいたり、話をちょっと訊いてみたいなと思ってくれる人が一人でも二人でもいたら、一度の人生、この世に生まれて、今を生きるにあたってすごい幸せなことだと思うんですよね」
とにかく行動することで未来を切り拓いていく。結果、人が幸せな気持ちになってくれたり、楽しんでもらえたら嬉しい。
乙坂は自ら口にすることはないが、オフになると生活困窮者への炊き出しなど、積極的にボランティア活動をしている。聞けば、母方の実家は26代続く寺院。住職の叔父をはじめ、家族みんなで日常的に慈善活動をしており、幼いときからその姿を当たり前のように見てきたという。乙坂は取り組みについて「遺伝子レベルなんですよね」と笑う。「素晴らしいことじゃないですか」と言うと、乙坂は首を振った。
「素晴らしいことだとは思わないけど、たぶん誰もがそういう気持ちは絶対に持っているはずなんですよ。ただ行動をするか、しないか」
乙坂は、考える前に飛ぶタイプだ。行動しなければ状況は変わらないとばかりに。
「まあたまに大怪我することもあるから気をつけないと(苦笑)」
メキシコでは、そうならないことを願うばかりである。が、酸いも甘いも噛み分けつつある今の乙坂ならきっと大丈夫だろう。
「自分が選んだ道だからひとつも後悔はないですよ」
「今は刀を研いで戦いに行く準備をしているところです。本当、戦力外というと皆、心配してくれますけど、僕はすごく元気だし、希望しかないんですよ。小さいときから野球をやってきて、どれだけやれるのかを示したい。自分自身そこに一番興味があるんです。自分が選んだ道だからひとつも後悔はないですよ。やるしかないですね」
まずは愛する横浜の街から太陽の国メキシコへ、飛び立つ。
取材終わり、東京湾をゆっくりと行き交う大型船を見ながら「うーん、今日はいい話できましたかね?」と、乙坂がポツリ。もちろん、もう十分だ。Que te vaya bien!(お元気で、いってらっしゃい!)