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古賀紗理那“雄叫びスパイク”から読み解くリアルな現在地「今は代表のことは頭にない」のに「もっとバレーがうまくなりたい」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/02/25 17:03

古賀紗理那“雄叫びスパイク”から読み解くリアルな現在地「今は代表のことは頭にない」のに「もっとバレーがうまくなりたい」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

東京五輪の敗戦から半年、笑顔を交えながら心境の変化を語った古賀紗理那(NECレッドロケッツ)。チームの勝利のために味方へ要求することが増えた

「決まった、決まらなかった、という結果よりもそこにつながるプレーがどうだったか。いいものはいいと伝えるのと同じぐらい、よくないことを気づかせるのも大事だと思うんです。特に二千華のように力があって、NECでも代表でも活躍する力を持つ大切な選手はやってもらわないと困るし、二千華が活きるためなら私も何でもやる。もちろん二千華だけじゃないですよ。バレーボールは1人じゃ勝てないから、私もチームが勝つためにできることは何だってするし、みんなにもやってほしいと思うんです」

 とはいえ、紛れもなく攻守共にチームの中心である古賀と同じように誰もができるわけではない。プレーやスタイルが異なるように、「気になったことは聞かないと気が済まない」という古賀とは性格や発信力も違う。良かれと思い言及することを“圧”と捉える選手も中にはいるかもしれない。これまでも「私、怖いかも?と感じることはあった」と笑う。

 だが、チームの主将である山内美咲(26歳)が発した何気ない一言に「チームとして戦う」ために大切なことは何かを気づかされた。

理想とする“チームワーク”とは?

「『紗理那が6人いても勝てないんだよ』って。私は献身的に、チームのためにやることが一番大事だと思っていたから、この攻撃を増やしたい、もっとこうしてほしい。人はみんな違うのはわかるけれど、チームのためにはこうあるべき、と私は私で普通だと思うことをぶつけたんです。でも美咲さんに言わせれば、全員が献身的なプレーばかりしていたら勝てない。誰かの調子が悪ければ『私が全部決めてやる』と思う一発屋、起爆剤みたいな人も必要でしょ、と。そう言われて、本当にその通りだな、と思って。

 私みたいに言いたいことばっかり言う選手が6人いてもチームにならないし、私には私の目、別の人には別の目があって、見え方、考え方も違う。その個性も活かしながら、それぞれが役割を果たして仕事をするのが、チームにとって大事なことなんだ、と改めて気づかされました」

 冒頭のトヨタ車体戦で叫びと共に放ったスパイクはまさに、古賀が理想とする“チームワーク”の象徴でもあった。

 2セットを先取した第3セット、11対11と同点の場面でトヨタ車体はアメリカ代表のエース、ケルシー・ロビンソンが放った「決まった」と思わせる強烈なスパイクを、攻撃型のアウトサイドヒッターで、守備があまり得意ではない廣瀬七海(24歳)がレシーブでつないだ。決して質のいい返球ではなかったが、コート中央からセッターの塚田しおり(27歳)が丁寧に上げ、古賀に託される。

 勝つために、この1点は絶対に決める。

 映像からもハッキリ確認できるほどの「声」が出るのも必然の、それぞれが役割を果たして得た、勝利を手繰り寄せる大事な1本だった。だから自分でも「驚くほどに」叫んだ。

【次ページ】 リーダーになれる?「無理です、ムリムリ」

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