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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「金メダル獲れなくてすみません」五輪銀メダリストが語る日本人アスリートが謝罪する理由「恩返しがしたかったんだろうなって」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2022/02/18 17:00
女子モーグルで5位入賞を果たした川村あんり(17歳)。競技後は「メダル取れなくて申し訳ない」とコメントを残した
梶原 私の出番は8月8日で、最終日だったんですけれど、本番に向けて徐々に緊張が高まってきて金メダルへの執着心やいろいろな感情が生まれてきました。その中で母(有里さん)と毎日電話で話すことが気分転換になりましたね。母から「ここまで、優勝する選手たちは会場に入るときに笑顔を作っているね。楽しもう! という笑顔を作ってから、会場に入ることが大事よね」と言われて。私も本番当日は意識的にずっとニコニコしていました。
「ごめんなさい」が原動力に
――そのアドバイスが銀メダル獲得につながったのですね。一方で、競技後に暗い表情で「メダルを獲れなくてごめんなさい」という言葉を発する選手がいます。梶原さん自身、銀メダル獲得後、「金(メダル)じゃなくてごめんね」という言葉を残していました。
梶原 私も走り終えたあと、ゴール直後は泣いていました。悔し涙を抑えきれなくて……。その後、母の元に行って出た第一声が「金メダル獲れなくてごめん」でした。その時に母から「うれしさと悔しさ、何割何割?」と聞かれたので「悔しさ7割、うれしさが3割」と答えたのを覚えています。すごく悔しかった。五輪に出て金メダルを獲れなかった選手の多くが悔しいはずなんですよね。支えてくれた人への恩返しがしたかったんだろうなって。だから「金メダル獲れなくてごめんなさい」の言葉は出てしまうと思います。その言葉が次への原動力になるのです。
――次への原動力。賛否ありますが「吐露しても良い言葉」なのかもしれませんね。
梶原 私も「ごめんなさい」のあと、会見で言ったのは「次は金メダル獲ります」でした。すでに前向きな言葉に切り替わっていました。アスリートって「1番」だけが「勝ち」。「1番以外は負け」と思ってしまうので、あとからいろんな人に「凄いことだよ」「頑張ったね」と言ってもらうことで救いになるんです。悔しくて出た思いや、メダルや結果に対して自分が感じた言葉をそのまま伝えればいいのかなと思います。
「戦う環境を自分で整えていくことが大事」
――メンタルヘルスについてもう一点。女性である梶原選手の口からSNSに対する考えをお聞きしたいです。大会中、心無い言葉がSNSなどで散見されることがあります。どう付き合っていくのがいいのでしょうか。