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《転倒・菜那と涙の姉妹愛も》高木美帆「足元は見てますが、狙うのは世界の…」 悲願の個人金とライバルも絶賛の“美しいスケート”
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/02/18 17:03
1000mで五輪新をたたき出し、自身初となる個人金メダルを獲得した高木美帆
高木姉妹と佐藤、そして押切美沙紀のメンバーで出場した日本。今大会は他国が「プッシュ作戦」と呼ばれる新戦法を生み出したことで、勢力図は混沌としていた。それでも初戦でいきなり2分53秒61の五輪新記録を出し、準決勝ROC戦でもきっちりと勝ち切った。迎えた決勝戦、対戦したのは今季W杯で3連勝を飾るライバル、カナダだった。
スタート後から日本はわずかにリードを保つ。カナダは長身選手が先頭について“風よけ”役になり、コンマ数秒の差をめぐる争いになった。そしてラスト1周の最終コーナー……踏ん張ってきた最後方の姉・菜那が体勢を崩して転倒。涙の銀メダルとなった。
試合直後、号泣する菜那を美帆らが慰め、メンバーで円陣を組むなど、チームの団結心の固さを感じさせるシーンもあった。何よりカナダのメディア「TORONTO STAR」によると、勝利したカナダ陣営から「彼らのシンクロニシティは非常に興味深く見ている」「日本のスケートはとても美しい」とのコメントが出ており、その技術の高さは国を超えて高く評価されている。
5種目のレースに出続けるタフさと、1000mでの五輪新
<名言3>
足元は見ていますけど、でも狙うのは世界のトップです。
(高木美帆/Number900号 2016年4月14日発売)
◇解説◇
姉の菜那と平昌五輪でともに頂点を目指すことを誓い、「一緒に出ようと話しているようでは世界と戦えないですからね」。目標を高いところに設定した高木美帆は、前述した平昌五輪1500mで銀メダル、1000mで銅メダル、さらにはチームパシュートで金メダルを獲得した。日本人で金を含む3つ以上のメダルを同一大会で獲得するのは、冬季オリンピックでは長野大会の船木和喜以来20年ぶり2人目という快挙を達成した。
それだけの結果を残しただけに、どこかで満足感を覚えても不思議ではないが、高木美帆にとって常に目標設定にあったのは「世界のトップ」だった。
北京五輪で高木は、13日間で5種目のレースに出場した。
3000m/1500m/500m/チームパシュート/1000m
大会序盤は苦しんだ。3000mは6位に終わり、最も金メダルが有力視されていた1500mでも、高木の前に滑ったイレイン・ブスト(オランダ)が1分53秒28と五輪記録を更新。その心理的影響があったか1分53秒72の2位で銀メダルだった。
もちろん2大会連続でのメダル獲得の時点で快挙であるし、連日のように肉体の限界に挑むタフさも称賛に値するのだが……ここから調子を上げていったのが、高木の非凡さだろう。
短距離の500mで自己ベストの37秒12をマークし、銀メダル。悔しそうだった1500mとは対照的な、会心のガッツポーズを見せたのが印象的だった。
チームパシュートの銀メダルを経て、今大会の自身ラストレースとなったのは1000mだった。