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「俺を使う監督が一番大変だと思うよ」55歳三浦知良が兄ヤスへ伝えたことは? “覚悟”を持って臨む《JFL鈴鹿での最終章》
text by
一志治夫Haruo Isshi
photograph byMegumi Seki
posted2022/02/26 06:00
昨シーズンは出場時間1分に終わったが、それでも「情熱が消えることは一度もなかった」と語った三浦知良。55歳で臨む新シーズンへの覚悟とは?
こうした状況は、鈴鹿に移ってからも大きく変わることはないとカズは言う。
「それはたぶん、今度のチームのヤスさんも一緒だと思う。兄弟として、ファンとして出て活躍してほしいという立場と、監督としてチームを勝たせないといけないという立場と。その中で俺をどういうふうに活かせるのか、ちょっとやってダメだと言うかもしれない。それはヤスさんにも言ったの、ダメだったらダメと言ってほしい、と。
鈴鹿に決まる前、7月頃にヤスさんとの世間話の中で、『1年間やれるかどうかわからない。実際に試合に出てどうなのかを自分で判断していきたい。もしかしたら、1シーズンもたないで終わるかもしれない。5、6試合やって無理だって言うかもしれない。もう通用してないと思うかもしれない。逆に5、6試合やって、いいと思うかもしれない』といった話をしていたんです。
実際、わからないんです。やり始めたらパフォーマンスはよくなっていくかもしれない。2試合でダメかもしれないし、身体がもたないかもしれないし、逆にトレーニングの成果がきっちり出るかもしれない。やってみて、自分で判断していくしかない。そこで終わりなら終わりでしようがない。
でも実際、一昨年だって、ルヴァンカップとかに出たり、先発出場したりすると、やっぱり調子がよくなるんですよ。去年フロンターレ、ヴァンフォーレとの練習試合に2試合連続で65分、70何分か出たけど、動けるようになる。その試合のビデオも全部見返したけど、やっぱりよかった。そういう実感があるからこそ本番の緊張感でやってみたいんです。ああいうのをやっていけば、よくなるんじゃないかという感触が俺の中にはあって」
大変なのは監督「僕が一番楽ですよ」
鈴鹿は、昨シーズンをJFL4位で終えている。J3への要件はすでに満たしており、今季、上位2チームに入れば、自力昇格できる。
JFLというカテゴリーながら、もちろん鈴鹿での戦いもまた、容易ではない。
「ただ、一番大変なのは、やっぱり監督です。俺じゃなくてヤスさんですよ。俺を使う監督が一番大変だと思うよ。横浜FCでもそうだけど、俺の存在というのはみんなにとってストレスだから。いい面もあるけど、監督にとってはストレスだからね。どうやって使おうかということを考えなきゃいけないけど、選手は30人ぐらいいるわけで、ひとりのことをそんなに考えてられるもんじゃないから。俺が出場することをクラブは望んでいるし、社会もそう望んでいる部分もあるわけで、いい意味でも悪い意味でも、俺って人間はみんなのストレスだからね。僕自身が一番ストレスがないです(笑)。僕が一番楽ですよ」