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オリンピックPRESSBACK NUMBER
天才スケーター・加藤条治が語る“金メダル候補という人生”…五輪で銅獲得も「世界で3番の人だと認識されますから」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2022/02/11 11:03
2010年バンクーバー五輪の銅メダリスト・加藤条治。元世界記録保持者が語った“金メダル候補”の重圧とは
加藤条治37歳が今思うこと
トリノ、バンクーバーと、金メダル候補として2度の五輪を戦い抜いた後も、加藤の挑戦は続いた。三たび金メダルを目指した2014年ソチ五輪は5位。故障に悩まされながらも一発勝負の代表選考会で上位に入って代表入りした2018年平昌五輪は6位。バンクーバー以外3度の五輪はすべて表彰台まであと少しという成績だった。
5度目の五輪出場は果たせなかったが、昨年12月下旬の北京五輪代表選考会では、完走していれば上位の一角を崩していた可能性があるというような滑りを見せた。17歳だった2002年10月のW杯初参戦から、実に20年間にわたってトップクラスの実力を維持してきた自負を、滑りで表現した。
2月6日、加藤は37歳になった。今、思うことは何か。
「金メダルを逃しちゃったし、メダルを逃し続けた。ただ、バンクーバー五輪の銅メダルについては、当時はつらい気持ちが大きかったけど、メダルの1個でも獲っておいて良かったと思います。五輪の4大会を通してすべて入賞以上だった、世界のトップに居続けたというのは、自分のなかでいちばん誇りに思う結果だと思います」
「『銅メダリスト』と言われると、世界で3番の人だと認識されますから」
加藤は「メダル」と「連続入賞」は違う計りで評価できると考えている。
「競技を長くやってきたこと、ずっとトップにいられたこと、すべて入賞したというのは自分の象徴的なところです。
一方、(最高成績が)銅メダルという点は納得いっていません。『銅メダリスト』と言われると、世界で3番の人だと認識されますから。世界記録も更新したし、ワールドカップも14勝しているし、世界距離別選手権も優勝しているけど、3位といわれる。だから、銅メダルを持っていて良かったなと思う反面、それによって3番の選手になってしまった苦しさもある。複雑なところですよ」
昨年12月、選考会で転倒、その真相
さて、昨年12月の北京五輪代表選考レースでは、スタートからの100mを全体4位の9秒58で通過し、得意のコーナーでぐいぐいと加速。バックストレートでも勢いは止まらなかった。ところが、ハイスピードで最終コーナーに突入すると、カーブの頂点付近でバランスを崩し、転倒した。
だが、万事休したと思われたところからが、加藤の真骨頂だった。すぐに立ち上がり、転倒した地点まで戻ると、最後まで滑りきった。なんとしてでも順位を残すのだという意思が伝わる姿だった。
「転んだ瞬間にまだ諦めていない自分がいた。失格にならなければ順位はどうなるかわからない。一番大事なのは絶対に諦めないこと」
タイムは54秒35だったが、誰よりも大きな拍手を浴びた。