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羽生結弦「逆境は嫌いじゃない」 SPまさかの8位…フリーに仕込んだ“2つの最終兵器”と大逆転に向けたシナリオとは? 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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posted2022/02/09 17:05

羽生結弦「逆境は嫌いじゃない」 SPまさかの8位…フリーに仕込んだ“2つの最終兵器”と大逆転に向けたシナリオとは?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2月8日の男子シングルSPにて、まさかのジャンプミスから8位となった羽生結弦

フリーの構成に書かれた、驚くべき「2つの最終兵器」とは?

 その夕方、羽生が登録したフリーのジャンプ構成に、驚くべき最終兵器が2つ書き込まれていた。もちろん1つは4回転アクセル。そして新たに加えられたのは「トリプルアクセル+3回転ループ」だった。これは4回転アクセルの回転軸をつくる練習としては行っていたが、試合で入れたことはない。トリプルアクセルで完全な右の回転軸をキープしながら降りない限り、3回転ループをつけることはできず、リスクが高いからだ。実際のところ、1998年にアレクサンドル・アブトが成功した記録があるものの、現行ルールでの成功者はいない。

 しかし羽生はこの「トリプルアクセル+3回転ループ」を入れるという。全日本選手権のときは「4A、4S、3A−2T、3Lo」だった前半のジャンプを、「4A、4S、3A―3Lo、3F」へと変更することで、基礎点は4.0点上がる。

 首位のネイサン・チェンとの点差は18.82点で、3位の宇野昌磨との点差は10.75点。いずれにしても4回転アクセル1本の点差だけでは足りないと判断したのだろう。諦めるつもりは全くない。自身が持つすべての武器を考え抜き、羽生結弦らしい戦いを求めた結果、「4回転アクセル」と「トリプルアクセル+3回転ループ」の共演という、アクセルの宝箱のようなジャンプ構成に辿り着いたのだ。

4回転アクセルの成功の可能性は

 もちろん羽生の最大の夢である4回転アクセルの成功も重要だ。全日本選手権では、半回転足りずに両足着氷したため、ダウングレード判定だった。得点としては、基礎点8点から出来映え(GOE)がマイナスされ、獲得したのは4.11点だった。もし4回転半に足りていれば、基礎点が12.5点で、さらにプラス評価を得ることになる。

 では、その成功には近づいているのか。答えはイエスだ。

 2月7日、羽生が北京入りして最初の公式練習。そこで羽生は35分間の半分ほどを4回転アクセルの練習にあてた。そのジャンプは、全日本選手権からわずか1カ月半とは思えない、大きな進化を遂げていたのだ。

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