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「女子高生vs元家庭科の先生」異色タイトル戦も実現…羽南17歳が描くスターダム新世代の未来「生徒が勝たなきゃ面白くない!」
posted2022/02/10 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
スターダムではビッグマッチ前の記者会見が恒例になっている。毎回YouTubeで生中継されており、選手の私服姿も見どころの一つだ。セクシーさを強調したり思い切りカジュアルだったり、それぞれ個性が出る。
キャリア3年未満もしくは20歳以下が対象となる、フューチャー・オブ・スターダムのベルトを巻く羽南は17歳。高校2年生で、会見にはいつも制服姿で登壇する。いかにもフレッシュで、本人もそれを意識しているそうだ。
「(制服姿は)今しかできないことなので。JKブランドじゃないですけど(笑)。そういう部分でも注目してもらえたら」
父親が大のプロレスファンで、連れて行ってもらったのがスターダムの会場だった。妹の妃南が「プロレスやりたい」と言い出して「そうか、そういう関わり方もできるんだ」と思ったそうだ。6歳から小6まで柔道をやっていたから、闘うことは身近でもあった。
中学生でデビュー「何歳だからとか関係ない」
中学入学直後の2017年4月にデビュー。2歳下の双子、妃南と吏南も翌年秋にリングへ。実家のある栃木から、片道2時間かけて道場や都内の試合会場に通う。負傷や受験などで欠場した期間もありつつ“柔道3姉妹”として常に将来を嘱望されてきた。けれど本人にとっては、いつだって今が大事だった。
「いろんな人に“若いね”とか“将来が楽しみだね”って言われてきたんですけど、やっぱり今がんばらなきゃいけないし、結果を出したいんですよ。それは何歳だからとか関係なくて」
願い続けた“結果”を出す瞬間は「もの凄いタイミング」でやってきた。昨年12月29日の両国国技館大会、羽南は琉悪夏が保持していたフューチャー王座に挑戦する。2人は同い年で同期。羽南のデビュー戦の相手も琉悪夏だった。
「たくさんシングルマッチをしてきたけど、私たちの試合にベルトがかかるのはこれが初めてです。琉悪夏と羽南にしか作れない、スターダムの未来をお見せします」
対戦に向けた会見で、挑戦者はそう語った。単なる若手枠ではなく、「まだ未成年だし」という言い訳もいらない。ビッグマッチでベルトをかけて闘うことに意味があった。フューチャーのベルトを“今”巻くことで、未来は「いつかそのうち」ではなく具体的なものになる。
同世代の琉悪夏から奪ったフューチャーのベルト
琉悪夏はヒールユニット大江戸隊の所属だが「羽南とこのベルトをかけて闘えることが凄く嬉しい」と率直に語っている。ここではユニットの違いや、ヒールとベビーフェイスの対立は重要ではなかった。スターダムの未来を担う同世代、その意味で2人は同志なのだ。
体格面の不利もあり苦戦した羽南だが、琉悪夏の必殺技である冷凍庫爆弾(ダイビング・ボディプレス)をかわすと形勢逆転。初披露のバックドロップホールドで3カウントを奪った。所属ユニットSTARSを率いる“スターダムのアイコン”岩谷麻優のアドバイスで、この技を使うことにしたそうだ。
「柔道をやっていたのもあって、投げ技で決めたかったんです。大きい相手を全身を使って投げたいって。ブリッジも得意なので」