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「女子高生vs元家庭科の先生」異色タイトル戦も実現…羽南17歳が描くスターダム新世代の未来「生徒が勝たなきゃ面白くない!」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/10 17:01
17歳にして、フューチャー・オブ・スターダムのベルトを保持するプロレスラーの羽南
初防衛戦は“高校生vs.元家庭科の先生”に
初防衛戦の相手も自分より大きかった。177cm、日本の現役女子選手で最長身のレディ・Cだ。一昨年デビューだからまだ新人だが、社会人経験がある。中学と高校で家庭科の教師だったのだ。つまりこのタイトルマッチは“高校生vs.元高校教師”。舞台は1月29日のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)大会だった。大会場にふさわしい対戦だと運営が評価したということだ。
チョップに顔面蹴り、チョークスラムと、レディ・Cの技はことごとくダイナミックだ。それを受け切った上でピンチをしのぎ、羽南はまたもバックドロップホールドを決めた。
「先生と生徒が闘ったら、生徒が勝たなきゃ面白くないですよね」
ベルトを守った羽南は笑った。“大人”との闘いならこれまでずっとやってきた。勝つのは難しいけれど、いつもそれを考えてきたから違和感はない。
「やっぱりパワーだったり、いろいろ差があるとは思います。そこを頭を使って、体を使ってどう勝つか。難しい分、勝った時の感情も凄いですね。プロレスにしかない喜びかもしれないです」
林下らの“黄金世代”も意識している
それに、今の羽南はチャンピオンだ。単なる“大人に挑む子供”ではない。
「ベルトを獲った試合と防衛戦では気持ちの面でも全然違いましたね。チャンピオンは相手のいいところも出させた上で自分が勝たなきゃいけない。せっかく挑戦してきてくれたんだし、明るい未来を見せるためにも、ただ勝つだけの試合ではチャンピオンらしくないなって」
初防衛に成功すると、すぐに向後桃が挑戦表明してきた。羽南はその場で受諾し「足跡のない未来を進んでいきましょう」。試合は2月23日のアオーレ長岡大会で行なわれる。これで3カ月連続でのタイトルマッチだ。次々と挑戦者が現れる状況を、チャンピオンは歓迎している。
「挑戦資格のある選手全員と闘いたいし、みんながほしがるベルトにしたいので」
スターダムの未来を作るのは自分だけではないと羽南は考えている。フューチャー王座に挑戦資格がある選手たち、その世代全員で盛り上げていきたいし存在感を高めたい。前ワールド・オブ・スターダム王者、昨年の女子プロレス大賞に輝いた林下詩美たちが“黄金世代”と呼ばれていることも意識している。
「上の世代に負けないように、私たちの世代もみんなで頑張りたい。そうすればスターダムはもっと面白くなると思うので」