濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「女子高生vs元家庭科の先生」異色タイトル戦も実現…羽南17歳が描くスターダム新世代の未来「生徒が勝たなきゃ面白くない!」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/02/10 17:01
17歳にして、フューチャー・オブ・スターダムのベルトを保持するプロレスラーの羽南
「ひたすら楽しく一生懸命」だった彼女の変化
昨年春、同じSTARSの飯田沙耶が試合中に負傷し、現在も長期欠場を余儀なくされている。羽南は飯田が戦線離脱して以降、リングアナのコール時にゴリラのドラミングのポーズを見せるようになった。飯田の入場パフォーマンスだ。
「飯田ちゃんはケガでフューチャーのベルトも返上して、凄く悔しかったと思うんです。だから飯田ちゃんの気持ちも全部背負って闘ってるよっていうメッセージですね。お客さんはもちろんですけど、誰よりも飯田ちゃんに伝えたくて。飯田ちゃんが持っていたベルトだから、余計にフューチャーは獲りたかったんです。ケガがよくなってきて、挑戦した時に飯田ちゃんがセコンドについてくれたのは本当に心強かった」
同世代で盛り上げたい。仲間のためにも勝ちたい。そう思うことでレスラーとしての自覚が強まっていった。以前はひたすら楽しく一生懸命に試合をしているという印象だったが、今は「チャンピオンらしく、堂々とした試合」を心がけているのが伝わってくる。レディ・C戦も、その直後の鹿島沙希戦(2.1後楽園ホール)もそうだった。
鹿島には敗れたが、試合のたびに声や動きや表情が大きくなっているのが分かった。ゴング前には、大江戸隊の鹿島に「吏南がお世話になってます!」と握手を求め、ペースを崩させてからの奇襲。曲者相手に頭をひねって立ち向かった。
「ここでベルトが獲れなかったら進学」の決意だった
この大会は平日の開催。学校は早退してきた。プロレスをしていることは学校では言っていないから「時々、早退したりして何やってるんだと思われてるでしょうね」。長岡での防衛戦の前には学年末試験をクリアしないといけない。
「そこは一夜漬けでなんとかなると思います。移動の電車で勉強? いや、寝ちゃってますね(笑)」
本人に言われて気づいたが、羽南がタイトルを奪取したのは高2の冬。学校に進路志望を提出する時期だった。就職、進学、文系理系。それによって3年生のクラスも変わる。
「凄いタイミングでタイトルマッチが決まったんですよ。だから考えましたね。プロレスを続けるかどうか。ここでベルトが獲れなかったら進学しようかな、とか。でも勝ったので、卒業したらプロレス一本でいこうと決めました」
高校生活は残り1年。道場に行かない日も筋トレやランニングをするから、学校帰りに友だちと遊ぶ時間はない。でもそれが「私なりの青春」だったから後悔はしていないという。姉妹でやってきたのもよかった。
「あそこはもっとこうしたほうがよかったとか、姉妹だから遠慮なく指摘しあえるんです。3人でプロレスラーになったのは、凄くプラスでした」
夢は「3姉妹で6人タッグのベルトを」
2.23長岡大会では、吏南が次期フューチャー王座挑戦者決定戦に臨む。吏南、妃南(現在は受験勉強に専念するため欠場中)とのタイトルマッチは、羽南にとっても大きな目標だ。
「今は全員ユニットが別なので、闘いながらそれぞれのユニットで力をつけていく時期だと思ってます。私はSTARS、吏南は大江戸隊、妃南はQueen’s Quest。先輩たちから違うタイプのプロレスを吸収していきたいです」
その上で、必ずやりたいことがある。
「3姉妹でアーティスト(・オブ・スターダム=6人タッグ王座)を獲りたいです。そのためにも今は個々で力をつけて、それが合わさったら最強だなって」
その時、未来は“今”になるだろう。17歳の夢は広がる。フューチャー・オブ・スターダムのベルトは、羽南にとって夢に向かうための翼だ。
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