- #1
- #2
オリンピックへの道BACK NUMBER
カーリング人気解説者・市川美余はなぜ24歳で現役を引退したのか「次の五輪を目指す覚悟がなかった」《中部電力で日本選手権4連覇》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYuki Suenaga
posted2022/02/09 17:00
カーリング解説者の市川美余は、中部電力時代に日本選手権4連覇を達成。現ロコ・ソラーレの藤澤五月とはチームメイトだった
「ストーンをためるためにドローのスキルを磨いて、展開を変える強いテイクアウトも練習しました。パワフルなショットやスイープのためにはとにかく筋力が必要なので、筋トレもたくさん積みましたね。私たちのスタイルは大量得点で勝負を決めることができる一方で、ハイリスクな戦い方でもあるのですが、(2011年の)日本選手権を勝ったところで『このスタイルで行こう』という決心がつきました」
今日では、国内の女子チームでも攻撃的な戦い方を志向するチームは珍しくはなくなった。市川は「中部電力がその先駆けになったと信じています」と胸を張る。
24歳で引退を決断した理由とは?
チームの活躍とともに、市川も「美しすぎるカーリング娘」と見出しがつくなど脚光を浴びるようになっていった。競技面ではなくビジュアルを取り上げる風潮は同じ報じる側として肯定的には捉えがたいが、カーリングに関心を持ってもらうのにひと役買った面もあったのかもしれない。
創部以来、好成績を上げ続けたチームだったが、2014年のソチ五輪は代表決定戦で敗れ、出場することがかなわなかった。同年5月、市川は記者会見を開き、24歳の若さで引退を発表した。
「一瞬続けようかという考えもよぎりましたし、ここでやめるのはもったいないとも思いました。ただ、次の五輪を目指して4年間また同じ努力ができるのか。その覚悟がなかったんです」
ソチを目指す日々が濃密であったからこそ、それを繰り返す決断は難しかった。また、結婚を考えていた自身の人生設計も影響した。
「結婚・出産後もプレーを続ける選手はたくさんいらっしゃいますが、私には子育てとカーリングを両立させる自信がありませんでした。子供との時間を優先したいとも思っていたので、その中で4年後を目指すのは……。遠征で2カ月家を空けることもありますし、あらゆることを考えた末に『両立はできない』と決断しました」
一時はカーリングから完全に離れた市川だったが、転機が再び訪れたのは、引退から数カ月後のことだった。<後編へ続く>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。