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オリンピックへの道BACK NUMBER
カーリング人気解説者・市川美余はなぜ24歳で現役を引退したのか「次の五輪を目指す覚悟がなかった」《中部電力で日本選手権4連覇》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYuki Suenaga
posted2022/02/09 17:00
カーリング解説者の市川美余は、中部電力時代に日本選手権4連覇を達成。現ロコ・ソラーレの藤澤五月とはチームメイトだった
「何度もお断りした」中部電力からの勧誘
転機は高校卒業を前に訪れた。中部電力から、カーリングの選手として活動していくことを前提に勧誘を受けたのである。
「最初は進学を考えていたのでお断りして、そのあとも何度もお断りしました」
それでも最終的に入社を決めた裏には、周囲の声もあった。勧誘を受けるとき、中部電力がオリンピックへの出場を青写真として描いていることを知った。
「家族や担任の先生と話す中で、『やりたいことはオリンピックのあとでもできるじゃないか』と言われ、たしかにそうだな、と。それにオリンピックを目指せるチャンスなんて人生でそうそうないし、大きなチャレンジだと考えるようになりました」
入社を決めたその瞬間が、「初めて、自分でカーリングを続けようと思ったときでもあった」という。
2009年に創部された中部電力カーリング部のメンバーは、リード佐藤美幸、セカンド清水絵美、スキップ藤澤五月。市川美余はサードとして作戦も勉強するようになり、これまでとはまったく異なる熱量で「上手になりたい」と思った。
目指したのは「見ていて面白いカーリング」
中部電力は2010年の日本選手権で3位になると、翌シーズンから4連覇を達成。2013年には世界選手権に出場するなど、紛れもない日本のトップチームとなった。
チームが目指したのは、「攻撃的で得点をとれるカーリング」だ。
「メンバーがそろったときに、どういう戦い方をするかミーティングしました。当時の日本の女子は相手のミスを待つ戦い方が多かったのですが、より男子に近いスタイルを目指そう、と。男子のSC軽井沢クラブと一緒に練習していて同じコーチだったこともありますが、見ていて面白いカーリングをしようと決めたんです」
理想とするカーリングを実現するために、技術や体力に磨きをかけた。