シュートやパスの正確性、ゴール下でのフィジカルコンタクトの激しさ。東京五輪を見た田臥は、このようなシンプルな要素に「各国との差を感じた」と言うが、最も気になったのは日本人選手のメンタリティだった。

「『国を代表して戦うことの激しさ』を、対戦相手から肌で感じて『自分も変わろう』とは思ったはずなんです。でも、実際にオリンピックが終わって間が空いてしまうと、その意識を持ち続けるのって難しいと思うんですよ。でも、雄太や塁は所属チームに戻っても常に激しい競争のなかでプレーしているんで、強い気持ちを持ち続けられる。その彼らが代表にいることはすごく大きなことだし、Bリーグの選手たちも少しずつ変わっていけるんじゃないかな、とは感じています」

「『日の丸を背負って世界と戦いたい』って想いを…」

　男子日本代表は、東京五輪で女子日本代表を銀メダルへと導いたトム・ホーバスをヘッドコーチ（HC）に迎え入れた。

トム・ホーバスHC ©Naoya Sanuki／JMPA

　スピードを生かしたプレースタイル。時にファイブアウトを活用するなど、柔軟な戦術展開を標榜する。日本の文化を知り、言葉も堪能なアメリカ人指揮官だからこそ、女子代表のような変革が求められている。

　しかし、初陣となった昨年11月のW杯アジア予選で中国に連敗した。田臥は「ここからどう成長していくか期待したいですね」と、結果には言及しない。選手の内側から湧き出るもの。気がかりは、やはりそこだった。

「予選ではいろんな選手が代表のユニフォームを着るチャンスを与えられたじゃないですか。今はそういう環境にあることを選手たちはプラスに考えて。『日の丸を背負って世界と戦いたい』って想いをどれだけ強く持って、代表に招集されたことを成長に繋げられるかが、これからの日本にとって大事になってくるんじゃないかなって思います」

　アジア予選では東京五輪より8人多い20人が代表に選出された。「選ばれてよかった」。初めてならそれでいい。田臥が言いたいのは、そこから「自分をどう表現していくべきか？」が問われるということだ。

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