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【没後23年】ジャイアント馬場「私、プロレスを独占させてもらいます。」ポスター撮影のカメラマンが語る“イタズラ好きの馬場さん”
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/01/31 11:01
筆者が撮影した全日本プロレスのポスター「みんなが格闘技に走るので、私、プロレスを独占させてもらいます。」のアザーカット
絵画が趣味で、試合中にイタズラをする茶目っ気も
馬場とはその後、試合前に雑談をするようになるが、プロレスの話をすることはほとんどなかった。
馬場はハワイで趣味として絵を描いていた。風景画だったようだが、見たことはない。ある日、馬場が後楽園ホールで「人物から背景まで全部にピントが合うカメラはないのかなあ」と聞いてきた。「絵なら、全部を鮮明に描くこともできる。写真はできないのか」という馬場の疑問だった。
光学的には無理だから「それはないですね。そんなカメラがあると楽なんですけれど」と答えたが、現在のようにコンピューターを駆使したデジタル画像なら、馬場が思い描いていたイメージも作り出せただろう。
リングサイドでタッグマッチや6人タッグマッチを撮っていると、コーナーの馬場はエプロンを歩いて来て、垂れているカメラのストラップを踏みつけるというイタズラをよくしていた。カメラマンがそれに気付いても素知らぬ顔をしていたが、ちょっと間を置いて足を離した。逆にカメラマンが撮影に夢中でそれに気が付かないと、ちょっと不満そうだった。そんな茶目っ気も魅力的だった。
近年、親類が営んでいた新橋の「ジャイアント馬場バル」も本日1月31日に閉店する。店内には馬場のガウンやシューズ、ベルトなどが展示されており、試合の映像が流れていた。「16文チョップビール」を飲みながら、プロレスファンが思い出話に花を咲かせていた。なくなると、ちょっと寂しい。
東京スポーツ時代から馬場と長い付き合いだったプロレス評論家の門馬忠雄さんは昨年『雲上の巨人 ジャイアント馬場』(文藝春秋)を書いたが、この店で一緒に飲んでいるときに「寝ているジャイアント馬場の布団を引っぺがしたのはオレしかいないだろう」と自慢気に笑った。
「朝、約束していたのに、アポー(馬場)が起きないんだから」
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