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無名の高校生が“箱根駅伝の名物ランナー”に…帝京エース・遠藤大地が明かす本音「もっと突き抜けたかった。もっと強い選手になりたかった」 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/01/27 11:04

無名の高校生が“箱根駅伝の名物ランナー”に…帝京エース・遠藤大地が明かす本音「もっと突き抜けたかった。もっと強い選手になりたかった」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

4連続で箱根駅伝3区を走り抜けた帝京大・遠藤大地。全国的には無名だった遠藤が“記憶に残る箱根ランナー”になるまでを振り返る

 競技者が大きな成長曲線を描くタイミングは、それぞれで異なる。大学在学中に記録をぐっと伸ばす選手もいれば、30代に入って突如ブレイクする選手だっている。遠藤の場合は、大学1年時がそのタイミングだったのだろう。

 2年時、3年時は、決して力が劣ったとは思わないが、1年時ほどのインパクトを残すことはできなかったのも事実。それゆえに葛藤が付きまとった。

中野監督が“4年連続の3区起用”にこだわったワケ

 そんな遠藤の心中に気づいていたのか、中野孝行監督は、4年連続で遠藤を箱根駅伝の3区に起用したことについて、こんなことを話していた。

「他の区間に使ってみたらどうなのかなって考えたこともあったんですけど、私自身、彼を“ゲームチェンジャー”として3区に起用することにこだわりがありました。ただ、4年連続同じ区間ということには、プレッシャーはものすごく大きかったと思います。どうしても過去の成績と比べられてしまうわけですから。よく耐えてくれました」

 4年間の奮闘をこう労うように、指揮官にとっても頼もしく思える選手だった。結果を出せずに苦しんでいる時でも、必ず戻ってくると信じ、辛抱強く待った。

「お前は湘南の風になるんだぞ」

 遠藤もまた、箱根に対する思いは強く、どんなに不調なシーズンを送っていても、箱根には必ず合わせてきた。そして、4年連続で任された3区で、ハイパフォーマンスを見せてきた。

 2年時は、従来の区間記録(1時間1分26秒)を上回り、当時の3区日本人最高タイムを打ち立てた。イェゴン・ヴィンセント(東京国際大)の圧巻の走りに霞んでしまったものの、田澤廉(駒澤大)や鈴木塁人(青学大、現SGホールディングス)といった他校の主力をも抑えている。3年時は2区を終えて14位と後方からのスタートとなったが、1年時に続き、またしても8人抜きの快走を披露。6位に押し上げた。

「お前は湘南の風になるんだぞ」

 そんな掛け声が運営管理車の中野監督からは飛んだが、まさに“湘南の風”のごとき疾走を披露してきた。

 好不調の波はあれど、遠藤の実力は誰もが認めるところだ。大学2年時には日本学生陸上競技連合の派遣でオランダに遠征。セブンヒルズ・ロードレース15kmに出場し、世界のトップランナーと戦った経験もある。箱根の走りを見ても、遠藤が世界を目指せる逸材であったことは明らかだ。

 しかし、これほどの活躍を見せてきたのにもかかわらず、遠藤は、大学4年間で競技に区切りを付けることを決めた。

【後編へ続く】

#2に続く
「『箱根駅伝をやってきたからです』と答えられる大人になりたい」“3区職人”遠藤大地はなぜ実業団ではなく就職を選んだのか?

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