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箱根駅伝とアクシデント「見たくないという声も聞くが…」徳本一善、中村祐二の“大ブレーキ”を実況したアナウンサーはどう思っていた?
posted2022/01/25 17:02
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
JIJI PRESS
初代実況者の脳裏に焼き付いた「徳本、中村の大ブレーキ」
3回目の放送となる第65回大会からは全区間の生中継が実現。小川さんはセンターを退いてからも、スタートやゴール地点での実況、またインタビュアーとして長く中継に携わった。もはや新春の風物詩と言っても過言ではない箱根駅伝。小川さんの脳裏に今も鮮明に焼きついているシーンとはどのようなものだろう。
「やっぱりね、アクシデントはよく覚えてますね。2区を走る選手はエースと呼ばれるんだけど、そんな彼らでも4年間走ったら1回は失敗するんです。法政大の徳本(一善)君も大ブレーキを起こしたし、山梨学院大の中村(祐二)選手もそうでした。監督がもう走らなくて良いというのに、一生懸命に襷をつなごうとする。ああいう姿は見たくないという声も聞くんだけど、あれも駅伝の厳しさで、私は良いと思うんですね。全力を出し切って倒れ込んでしまう選手がいる。どれだけ準備をしても、ケガで残念な結果に終わることもある。それはそれで仕方ないじゃないか、と私は思います」
第78回大会の2区で途中棄権した徳本は今年、監督として初出場の駿河台大を率い、長い歴史に新風を吹き込んだ。第72回大会、中村は当時3年生で、4区で途中棄権をした。だが翌年、2区を志願して走り、今度は気合いの入った丸坊主姿で8人抜き区間賞の活躍でその雪辱を果たしている。
テレビの演出ではなく、選手自らが紡ぎ出す熱いドラマであるからこそ、箱根駅伝は見る者の心を打つのだろう。
アクシデントを伝える時の心境「上手い表現はできない」
小川さんはアクシデントを伝える際の心境についてこう語る。
「アナウンサーの気持ちとしては、なかなか上手い表現はできないですね。『足が動いてない、前に進めるか』とただ事実を述べるしかありません。加えるなら、中継所では誰が待っているかを伝える。汗がしみ込んだ襷の重さは、駅伝においては特別ですから」
自身が実況を務めた中で、もっとも印象深いレースについて訊ねると、こんな答えが返ってきた。