「ブロックが違うのに、貴重な休みを削ってサポートをしてくれているわけなので、本当にすごくありがたいなと思いました。彼はオリンピックで準決勝まで進んだ選手です。そういう選手から給水をもらえたのは、いい刺激にもなりました」

　中谷は、単独走の難しいレースになったが、伝統校のエースとして3つ順位を上げる意地を見せた。

　しかし2区以降も巻き返すことができず、早大の最終順位は13位。まさかのシード権を逃す結果に終わった。

　伝統のエンジを背負う重圧は、山内にも身に覚えがある。

「想像できないようなプレッシャーや不安があったのでは」

「昔は、リレーの早稲田と言われたりしていたので、それを取り戻したいなと思って、僕たちも頑張っていましたので……」

　覇権奪還を目指して臨んだ9月の日本インカレでは、4×400mリレーで、惜しくも2年連続で2位という悔しさを山内は味わっていた。もちろん箱根駅伝と日本インカレを単純比較はできない。

昨年6月の日本選手権にて　©Asami Enomoto

「箱根駅伝は注目度が高いので、想像できないようなプレッシャーや不安があったのでは……」

　山内は、箱根を走ったチームメイトを気遣っていた。

早大競走部の一員として箱根駅伝を戦った一人

　本来なら、オリンピアンの山内の給水はもう少し話題になってもいいはずだが、2区は上位争いの変動が激しく、その一方で早大は下位を走っていたため、なかなか取り上げられることがなかった。

　種目は違っても、山内も早大競走部の一員として箱根駅伝を戦った一人。オリンピアンという立場におごることなく、懸命に仲間に尽くす山内の姿があった。