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153cmの中距離女王・田中希実の人気が急上昇中…日本陸連「あなたの心を最も熱くした選手」第1位に輝いたヒロインの強さとは?
posted2022/01/22 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
昨夏の東京五輪陸上女子1500mで史上初の快挙となる8位入賞を飾った女子中距離界のヒロイン・田中希実(豊田自動織機TC)が、さらなる飛躍を期して'22年を迎えている。
昨年末には日本陸連アスレティックス・アワード優秀選手賞を受賞したほか、同連盟が募集したファン投票で「あなたの心を最も熱くした選手」の第1位に選出された。記録でも順位でもレース展開でも見る者をワクワクさせるランナーは、人気も急上昇中だ。
その田中が昨年のベストレースとして挙げたのは、東京五輪女子1500mの予選と準決勝だった。
田中は五輪前の7月17日、ホクレン・ディスタンスのこの種目で、自身が'20年に樹立した4分05秒27の日本記録を更新する4分04秒08を出して弾みをつけると、8月2日にあった五輪本番の予選で4分02秒33、その2日後の準決勝で3分59秒19を出した。短期間に日本新記録を3度も樹立し、合計で約6秒もタイムを縮めたことも快挙としか言いようがない。
1500mは小学生からシニアまで幅広い年代で行なわれる種目。「世界中の人が取り組んでいる種目で(8位入賞という)結果を残せたのは価値があると思っている」とプライドを滲ませつつ、自身のタイムが小中学生の直接的な道しるべとなることにも意義があると喜んだ。
「1500mを極めればどんな種目にも対応できる」
専門距離に絞って強化するのがセオリーとされてきた日本の陸上界に一石を投じ、800mから1万mまで幅広く取り組むという独自の練習方法で強化を続けてきた。そんな田中にとって1500mのレースは、スピード持久力を磨くための鍛錬の場でもあった。
狙いの一つは、5000mで求められるレース中の駆け引きや揺さぶりに耐えるタフさを培うこと。一方、ラストの粘りは800mに生かすことができる。「1500mを極めればどんな種目にも対応できるということを、身をもって証明していけるようにしていきたい」と胸を張って語る。
今年7月には米国オレゴン州で世界選手権が開催される。本番での強さは、女子3000mで金メダルを獲得した'18年U20世界選手権から持ち続けている武器でもある。モットーとするのは「ひるまないこと」。力強く美しいフォームで駆け抜ける姿が今から楽しみだ。