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スターダム新王者・朱里が語った“亡き母への感謝”とチャンピオンの覚悟「プロレスも究めたと言っていいのかな」《戴冠記念グラビア》
 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/01/21 17:03

スターダム新王者・朱里が語った“亡き母への感謝”とチャンピオンの覚悟「プロレスも究めたと言っていいのかな」《戴冠記念グラビア》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

林下詩美を下し、第14代ワールド・オブ・スターダムチャンピオンとなった朱里

かつて小波に言われた「今の朱里さんはもどかしい」

 12.29両国大会では、スターダムに参戦することになった自分をユニット「Donna del Mondo(ドンナ・デル・モンド=DDM)」に誘ってくれたジュリアが負傷欠場から復帰した。メインイベントではDDMのメンバー全員がセコンドについている。

 ジュリアが対戦したのは小波。体調不良でいったんプロレスから離れることになっており、両国大会が退団マッチだった。

 小波はもともと、朱里のライバルだった華名の弟子。華名がWWE入りする際に「小波を頼むで」と朱里に託し、当時の所属だったREINAで2人は同門となった。小波にとって、朱里はもう1人の師匠だ。

「私がスターダムに来たことで、また一緒にプロレスができるようになって。3月には日本武道館でシングル。私たちが武道館で闘うなんて、昔は想像もできなかった。本当に嬉しかったです。11月にはUWFルールでのシングルも。私たちにしかできない試合で、スターダムに新しい風を吹かせることができたと思います。

 スターダムに上がり始めた頃、小波には“遠慮しないで朱里さんの強さをもっと出してほしい。今の朱里さんはもどかしい”と言われました。“朱里さんは優しすぎるんですよ”って。確かに、最初はスターダムでの立ち位置が掴めていなかった。どこまで自分を出していいのか迷ってたんです。昔から知っている小波だから、それが分かったんでしょうね」

兄が母の写真を抱えて…「天国のママ、ベルト獲ったよ!」

 ジュリアとの試合を終えた小波は、朱里vs.林下の解説をするためにリングサイドにいた。それもまた心強かった。さらに客席には家族もいた。

「父が初めて、私の試合を見に来てくれたんです。兄に連絡して聞いてもらったら“行く”と。もう70歳をすぎてるし神奈川からの移動だけでも疲れると思うんですけど。実はずっと、雑誌や映像を見てたみたいです。それに……」

 父の横に座る兄は、母親の写真を抱えて朱里の試合を見届けた。家族が“一緒”になるのは久しぶりだ。祖母の葬儀以来、ほぼ10年ぶりだろうか。朱里が両国という大舞台でタイトルマッチをすることで、再び家族が一つになった。

「DDM、小波、家族。それにいとこや親友も見に来てくれました。もちろんファンの人たちも。みんながいてくれたからベルトを獲ることができました」

 ベルトを巻いての第一声は「天国のママ、ベルト獲ったよ!」。今でも母の話になると涙が溢れる。

「本当は、生きていてほしかった……」

 ただ母がどこにいようと、母のために獲ったベルトであることに変わりはない。人生すべてをかけての勝利だったことも。リングを降りるとDDMの面々と抱き合う。そして小波が待つ放送席へ。終わってみれば、何から何まで朱里のために舞台が整えられていたような気さえする。

【次ページ】 「ようやくプロレスも究めたと言っていいのかな」

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