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勝ったのはアントニオ猪木だけ? 梶原一騎『タイガーマスク』実在レスラー登場シーンを再検証、“最後の相手”ドリー本人が驚く結末
posted2022/01/21 11:00
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph by
Moritsuna Kimura/AFLO
2022年は寅年。トラと耳にしてまず思い浮かぶモノといえば、阪神球団か、フーテンのあの方、そして梶原一騎の代表作『タイガーマスク』に尽きる。
梶原作品の魅力の一つに、劇中の登場人物と、実在するスポーツ選手との交流や対決場面がある。今回は最終回の結末など、大きく相違点があることでも知られる漫画版とアニメ版の両タイガーマスクに登場する実在プロレスラーについて検証してみたい。
初期の「黄色い悪魔」と呼ばれた時代こそ「相手を叩きのめしての反則負けこそ、わが誇り」 と吐き捨てていた通り、反則負けも見られたタイガーだが、漫画とアニメを合わせて喫したシングルマッチにおける反則負け以外の黒星はたったの1試合。
そんな無敵タイガーを破った男は、怪人のような悪役レスラーではなく、なんとアントニオ猪木だった。
若獅子・猪木と対戦、無念のリングアウト負け
タイガー敗北の場面が描かれたのはアニメ版の第16話「敗北の虎」。第10回ワールドリーグ戦の公式戦にてタイガーは、まだ「燃える闘魂」ではなく、「若獅子」と呼ばれていた猪木と対戦する。試合直前に虎の穴の使者・ミスターXに、自分のせいで虎の穴時代の友人であったロッキーとリコが死んだことを告げられてひどく動揺。試合に集中できない中、猪木のコブラツイストに苦しめられ、ドロップキックでリング下に落とされ、無念のリングアウト負けを喫している。
当時のワールドリーグ戦は日本陣営vs.外国陣営による総当たり戦による勝ち星数で優勝が争われるルールのため、日本陣営同士の対決は存在しないのだが、アニメだからまあいい。ちなみに現実の第10回ワールドリーグ戦(昭和43年)はジャイアント馬場がキラー・コワルスキーを下して優勝している。
アニメ版最終回(昭和46年9月30日放送)でタイガーは、そんな猪木と馬場がスーツ姿でリングに上がって必死に制止したものの、それを振り切って狂乱。虎の穴のラスボスであるタイガー・ザ・グレートをマントで縛り上げ、リング上に吊るされた照明器具に逆さ吊りにし、殴る蹴る、ゴングで殴打するなど人間サンドバッグにしたうえ、リングに落下して割れる照明器具の下敷きにするという、日本のテレビ番組史上でも最も残酷といえるシーンとともに、おそらく殺害して、虎の穴を壊滅させている。