濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
スターダム新王者・朱里が語った“亡き母への感謝”とチャンピオンの覚悟「プロレスも究めたと言っていいのかな」《戴冠記念グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/01/21 17:03
林下詩美を下し、第14代ワールド・オブ・スターダムチャンピオンとなった朱里
朱里がチャンピオンとして見せたいものとは?
初防衛戦は1月29日の名古屋大会。挑戦者は今年からスターダムに参戦、DDM入りしたMIRAIだ。舞海魅星の名で東京女子プロレスからデビューした選手で、キャリアは3年弱。いきなりの挑戦を疑問視するファンもいる。
「実績がないからって断るのは簡単ですけど、それじゃつまらない。勇気を持って挑戦してきたからには私も応えたいし、初防衛戦は私にとっても大事な勝負、挑戦でもあります」
チャンピオンとして「相手に限界を突破させて、その上で勝ちたい」と朱里。
「私に挑戦することで相手も上がるというか、得るものがあったなという試合になれば。プロレスラーである以上、お客さんにも相手にも何か伝えたい、残したいという気持ちは強いですね。影響を与える、人生を変えてしまうような存在が理想なので」
相手に力を出させるというのはプロレスならではの考え方だろう。格闘技では、とにかく勝つために必死だった。プロレスファンに「あんな細くて、本当にプロレスラーなのか。全然強さを感じない」と言われ、強さを証明しようと飛び込んだ格闘技の世界では「プロレスラーに何ができる」という空気を感じた。見返すためには勝つしかなかった。そういうところで結果を出してきたから“プロレスだからできること”への愛着も深いのだ。
「初防衛戦に勝てば、3月の両国国技館2連戦でタイトルマッチができる。最多防衛記録も作りたいですし、他団体の選手との防衛戦もやってみたいですね。今までいろんな団体で試合をしてきたので、女子プロレスにはいい選手がいっぱいいるのを知ってますから。
そういう選手たちがスターダムのリングに上がって注目されて、これまで以上に開花することもあると思うんです。私がそのきっかけになれたらいいなって。そういうことも、私がチャンピオンになった意味なのかもしれない」
「ようやくプロレスも究めたと言っていいのかな」
ハッスルから始まって数多くの団体のリングに上がった。ビッグマッチもあれば観客10人の会場も。ハッスルでは最初の2カ月しか給料が出なかった。UFC2戦目の舞台はチリ。30時間かけて移動し、秒殺された。
ありとあらゆる経験をしてきた自分だからこそ見せられるものがあると朱里は考えている。「朱世界」は技の名前というだけでなく、朱里が作る新たなプロレスの世界観という意味でもある。
「スターダムのトップに立って、ようやくプロレスも究めたと言っていいのかなって。そうなったことで、Krushやパンクラスでの結果もより活きると思います。全部やってきた私だから見せられるものがある。だからここからがスタートですね。自分が本当に輝くのはこれからです」
14年目にしてそう言えるキャリアの持ち主もなかなかいないだろう。理解されないことに怒り、不遇を嘆き、結果が出せずに泣いたこともある。それでも今、自信を持って笑いながら言えることがある。
「面白いですね、人生って。やってきたことすべてがつながるんです」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。