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ボクシングPRESSBACK NUMBER
禁止薬物の陽性反応でライセンス停止から4年…IBF世界王座を獲った尾川堅一が明かす“地獄の日々”「自分のためならとっくにやめている」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYuki Suenaga
posted2022/01/23 11:00
禁止薬物の陽性反応からおよそ4年、IBF世界スーパーフェザー級王座を獲った尾川堅一
支援者やファンに対して手紙を書いた
今回、王座を争ったフジレとは2019年7月にIBF王座の次期挑戦者決定戦で戦う予定だった。しかしフジレの渡航手続き不備で流れてしまい、コロナ禍にさらされる2020年は1試合しかこなせなかった。“再挑戦”のチャンスがなかなか巡ってこない。
待ちわびてようやく、またも空位となった同級王座を懸けて21年8月20日、UAE・ドバイで1位シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)との王座決定戦が決まった。
尾川は応援してくれる支援者やファンに対して手紙を書き、それを複写して渡している。
『最高の舞台。あの興奮をもう一度。
家族、ファン、帝拳ジムの為に。
復帰してから自分の為にボクシングをしていたらもうやめていました。支え続けてくれた方々の為に。
結果で恩返し。これが全て。
皆で笑いましょう!!
ご期待下さい!!』
彼の興奮と気合いが伝わってくる。
「ショックでした。試合の10日前にキャンセルですから」
だがこれまたラヒモフの負傷で延期になってしまう。メンタル面での影響が懸念されたが、地獄を経験した男は頼もしかった。
「ショックでした。試合の10日前にキャンセルですから。どんな相手にも負けないっていう最高のコンディションをつくることができたので、正直やってられないなとは思いましたよ。ただ、いつ(次が)決まってもいいように準備しようと気持ちを切り替えました。延期のキャリアも結構ありますから(笑)。気持ちの面でもそこは強くなっているところがあるのかなと思います」
仕上がりをキープし、継続して減量にも取り組んだ。気持ちを切らさず、トレーニングに励んだ。そして11月、あのマジソン・スクエア・ガーデンで2位フジレとの対戦に変更された。今度こそ延期はなく、試合が近づいてくる。
ついに“答え合わせ”のときがやってきた。
<後編に続く>