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大関→ケガで序二段→不屈の横綱「てるる」こと照ノ富士の“進化とイイ話”を山根千佳さんが教えてくれた「上半身がとても…」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKyodo News/Ichisei Hiramatsu
posted2022/01/16 17:02
初場所の宇良戦で驚異的な土俵際の粘りを見せた照ノ富士。同じ高校の出身の山根千佳さんも応援している
山根 それが幕内に限らず、全てを含めても鳥取出身の力士は本当に数少なかったんです。鳥取在住の頃にローカルニュースを見ていると……島根出身の隠岐の海関の特集が多かった記憶があります。
――山陰つながりでそうなるんですね(笑)。
山根 そうなんです。なので鳥取にゆかりがある照ノ富士関や逸ノ城関、石浦関がここ数年で出てきて活躍してくれるのが、鳥取県民として本当にうれしいんです。照ノ富士関は「とっとりふるさと大使」にも任命されていますよ。
十両の頃、大野将平選手と自分に宣言していたこと
――そんな照ノ富士関ですが、一度は大関に昇進しながらも、ヒザのケガで一時は序二段まで陥落しました。そこから不屈の精神で横綱の地位に上り詰めました。そのプロセスについて、山根さんが見聞きしたことはありますか?
山根 本人は、20代前半で1度目の大関昇進をした頃は「調子に乗っていた」と振り返っていたことがあります。その一方でケガで一度どん底まで落ちた時には、後援会などを離れていく人がすごく多かったそうです。だけど、ずっと「諦めないで」と言ってくれる人もいて、その存在が本当に大きかったそうです。私自身も「絶対大丈夫」という風に伝えていましたが……そういった過程を経たからこそ、精神面が磨かれたのかもしれません。
そんな照ノ富士関と凄く仲がいいのが、柔道の大野将平選手です。お2人は一緒にトレーニングをするほどの関係性ですし、実は私も親交があるのですが……。
――おお、大野選手。2人の関係は何となく聞いたことがあります。
山根 ある時、大野選手と私に対して照ノ富士関が「絶対に横綱になる」と宣言したんです。確か十両で再び力を発揮していた頃だったので「幕内には戻れそうかな」と嬉しく思いつつ、大ケガの影響を考えると横綱はどうなんだろう……と内心思っていたのですが、有言実行しました。頂点に駆け上がることしか考えていなかったという点で、誰よりも自分自身を信じていますし、強い精神力の持ち主だなと感じています。
そういった大変な過程を経たからこそ、支え続けてくれた人たちを大事にしているんでしょうし、横綱らしくいようとしているんでしょうね。相撲界は長い歴史がありますが、こんなに大きな挫折を味わって横綱になった人はいません。そう考えたら、本当にドラマや映画を観ているような気分なんです。
照ノ富士に次いで、期待している力士は?
――めちゃくちゃイイ話ですね……。それほどまでに気力が充実している照ノ富士関ですが……彼に迫れる存在になれそうな力士はいるんでしょうか?