濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
スターダム退団マッチで小波が“亡き戦友”木村花の技に込めた意味とは? 対戦したジュリアは試合中に涙…「まだまだNEVER ENDです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/01/12 17:02
スターダム退団となる試合で“戦友”木村花さんの得意技ハイドレンジアを繰り出した小波
小波が“木村花の技”に込めた想い
2人だけの闘いでもなかった。小波は現在の所属ユニット「大江戸隊」ではなく、TCS時代のコスチュームで登場した。スターダムのファンは、おそらくそれだけですべてを察した。
小波がジュリアに仕掛けたグラウンドの変形卍固めは「ハイドレンジア」。木村花の得意技だ。ジュリアにとってはライバル、小波にとってはTCSの盟友。そんな選手の技をここで出したことに、意味を感じないわけにはいかなかった。ミサイルキックからのパッケージ・パイルドライバーも花の「タイガーリリー」。
マンガ『キン肉マン』のキン肉バスターの体勢はジャングル叫女の「ジャングルバスター」だ。やはりTCSのメンバー。負傷欠場が長引き、昨年9月でスターダムを退団している。
「今日は大江戸隊じゃなくレスラー小波として闘いたかった。それでこのコスチューム。今は亡き戦友と、スターダムのリングにいないもう1人の戦友の気持ちも背負ってジュリアと対戦したつもりです。スターダムでやってきたことすべてを今日の試合に込めました。でも、これで終わりじゃない。またプロレスに、スターダムに戻ってきます。小波はまだまだNEVER ENDです」
レフェリーは、敗れた小波の手を挙げた
2020年、小波はTCSと大江戸隊の敗者ユニット解散マッチで大江戸隊に“寝返って”いる。けれどもこの両国大会では、自身の一つの節目となる試合では、彼女は木村花とジャングル叫女の“戦友”としてリングに立った。
ジュリアと小波の関係にしても小波のTCSへの想いにしても、もしかすると最後まで出さないほうが“プロ”らしかったのかもしれない。ただ、それでも溢れ出てきてしまうものまで含めての“プロレス”でもあるだろう。
試合はジュリアの勝利に終わったが、レフェリーは小波の手も挙げた。それに違和感はなかった。勝ったのはジュリアだが「小波が負けた」試合という印象は薄かったし、それを言うならこの試合の“登場人物”はシングルマッチなのに4人いた。出場していない選手さえリングに“いる”と実感できる。それもまたプロレスのエモーショナルなところだ。
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