濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
スターダム退団マッチで小波が“亡き戦友”木村花の技に込めた意味とは? 対戦したジュリアは試合中に涙…「まだまだNEVER ENDです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/01/12 17:02
スターダム退団となる試合で“戦友”木村花さんの得意技ハイドレンジアを繰り出した小波
「カバンをソリに…」小波のイタズラがジュリアを支えた
リング上で躍進する一方、舞台裏での支えになったのが小波だった。小波は花と同じユニット「TOKYO CYBER SQUAD(TCS)」のメンバー。敵対する間柄だったが、同時に同じ団体の仲間でもある。
「小波にはたくさんいじめられたというか、それが優しさだったというか」(ジュリア)
小波はジュリアに何度もイタズラを仕掛けた。
「ジュリアのサングラス盗んだり、大雪の秋田でジュリアのカバンをソリにして滑ったり」
対戦に向けた記者会見で楽しそうに振り返り「嬉しかったんだろ?」と小波。ジュリアは「嬉しかったよ!」と返す。小波は「ドMだな、お前」。
その頃を思い出して、ジュリアは笑いたいけど涙ぐむ。つまりはそういう関係性だった。移籍したてのジュリアは一種の“腫れ物”。それに構わず距離を縮めてくる小波がありがたかった。ジュリアは言う。
「こんなこと言っていいのかわからないけど……いいヤツなんです小波は。表には出さない顔がある」
決め台詞は「THE END」から「NEVER END」に
12.29両国国技館。試合開始早々、小波が背中への蹴りを放つ。一発で顔が歪む威力。しかしジュリアは「もっとこい」と煽った。食らえる攻撃は全部食らいたい、小波のすべてを味わいたいという思いだったはずだ。
けれど、これで最後にはしたくない。だから攻防はいつものように激しいものとなった。
「小波は唯一無二の選手。あれだけグラウンドが強い選手は女子にはなかなかいない。試合のたびに“グラウンドに持ち込まれたら勝てないな”って思うくらいで。でもやれることを最大限に準備して、全力でやろうと」(ジュリア)
小波の決め台詞は対戦相手に向けて放つ「THE END」。退団が決まると、それが「NEVER END」に変わった。これが終わりではないという、仲間やファンとの約束だ。ジュリアもそのつもりだったから、なおさら負けられなかった。
「この試合で“やり切った”、“プロレスがいい思い出になった”とならないためには、全力で勝ちにいかないと。絶対帰ってきてほしいので。小波は女子プロレス界に必要な選手だと思うから」