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三浦孝太「格闘技でキングに」 サッカーボールキックで勝利した“カズの息子”の実力は本物か? RIZINデビュー戦で見せた“明らかな才能”とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/01/06 17:03
2021年大晦日のRIZINにてデビューを飾った三浦孝太の衝撃のサッカーボールキック
試合を決めた衝撃のサッカーボールキック
三浦が勝った瞬間、プレスルームでは取材陣から拍手が起きた。“名前負け”しなかったことへの称賛もあるだろうし、何より「これは“見出しになる”ぞ」という感覚が強かったのではないか。筆者だってそう思った。
試合を決めた、グラウンド状態の相手を蹴り上げる攻撃はサッカーボールキックと呼ばれる。
「キング・カズの息子がサッカーボールキックで勝利」
完璧ではないか。試合後のマイクも、模範解答のレベルを超えていた。
「自分が(RIZINに)出るとなって批判の声、誹謗中傷もあったんですが、徐々に応援のメッセージも増えて力になりました。お父さんお母さん、小さい時はいっぱい迷惑かけたけど、初めての試合を見に来てくれてありがとう。これから、格闘技界の“キング”になれるように頑張ります。みなさん僕のファンになってください」
カズダンスは「最後のポーズだけ真似させてもらいました」
デビュー戦でこれが言えてしまうのだ。もちろんリップサービスの部分もあるだろうが、父親を本当に誇りに思っていなければ出ない言葉だろう。アマチュアも含めて人生初の格闘技の試合、そこで勝った直後。とてつもない興奮状態の中、咄嗟に出たものなのだ。
インタビュースペースでも驚かされた。サッカー時代のポジションを聞かれ「お父さんと同じフォワードです」。試合後のリング上でカズダンスのようなポーズを取っていたことについて質問されると、こう答えている。
「(やるかどうか)悩んだんですけど。カズダンスはお父さんが長年、サッカーを誰よりも愛して、ファンの方と一緒に作り上げてきたもの。僕が簡単に踊っていいものじゃないなって。なので最後のポーズだけ真似させてもらいました」
“カズの息子”として堂々と臨んだ舞台
自分が“カズの息子”だから出られたRIZIN。だが父親からは「決まったからには堂々としてろ」と言われたそうだ。実際、三浦は堂々と勝ち切った。堂々としていても嫌味に感じないのは、格闘技とそのファン、RIZINという舞台に対して真摯だったからだ。
三浦が試合の中で見せたのは基本通りの動き。しかし基本通りの動きをそのまま試合で出すのは決して簡単なことではない。ミスもあった。相手が失神したと思い、自らフロントチョークを解いてしまったのだ。しかしレフェリーは試合を止めておらず、あわてて仕掛け直す。ここはやはり“場慣れ”していないように見えた。「落ちた!」という師匠・宮田の声は、スパーリングであれば自分に向けてのものだった。しかし試合ではレフェリーへのストップを促すアピールだ。
それでも三角、十字、サッカーボールキックと状況に応じて次々に技を繰り出す。その動きに硬さは感じなかった。あるいは無我夢中で攻めただけ、スタミナ配分無視の“特攻”だったのか。気になったので本人に聞いてみた。