「あの位置に相手の顔がきたらいつでも蹴れます」

「向こうがガンガンきてくれたので、こっちもガンガンいけました。体力なら自分のほうがあるっていう絶対的な自信があったので。相手がガンガンきても、普通に対処してたら後半チャンスがくるとも思ってました。ただあそこで極めきれないで上を取られたら嫌だったんで、極めるか上を取るかしたかったです」

　自分のスタミナを計算に入れながらの闘いだったのだ。何をすればいいか、何をしてはいけないかの判断もできていた。プレッシャーや緊張は感じなかったという。大事にしたのは「平常心」。そのために、試合前はサッカー時代のウォーミングアップもしたそうだ。その動きがフィニッシュにつながったのかもしれないという。

「チャンスがきたら、サッカーボールキックで盛り上げたいという気持ちがあったんですけど、本当にチャンスがくるとは。あの位置に相手の顔がきたらいつでも蹴れます。ボールのほうが速いですから。でも、あそこまでもっていく過程が難しいので。過程を練習するのが大事ですね」

　キャリア1戦の新人だから、まだ多くを望むことはできない。今回は見えていない課題もあるのだろう。ただ話題性だけの選手ではないことも確かだ。

　強心臓。練習してきた技を躊躇なく出せること。試合を冷静に振り返ることもできる。それを言葉にして他者に伝えることも。これは明らかに才能だ。RIZINの榊原信行CEOも、大会でインパクトのあった選手の1人として三浦をあげている。定期的に試合を組み、育成していくそうだ。

　もしかすると、いずれ三浦孝太が「キング・カズの息子」なのではなく、三浦知良が「三浦孝太のお父さん」と呼ばれる日も来るのかもしれない。少なくとも若いファンの間ではそうなる可能性がある。

白スーツで血だらけのYUSHIにハグしたキング

　その一方で、格闘技ファンの間で「やっぱりキング・カズは凄い」となるエピソードもあった。敗れたYUSHIのコメントを紹介したい。

「試合が終わったときに（カズに）ハグしていただいて。白いスーツを着てるのに、血だらけの僕にハグしてくれた男気、カッコよさを感じました。国民的スーパースターになる人って、それだけカッコいいんだなっていうのを感じさせてもらって幸せでした」

　これぞキング。こんな父親なら尊敬するしかない。反抗している場合じゃないだろう、確かに。三浦孝太はキング・カズの息子“だから”将来有望なのかもしれない。

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