「箱根マジックを経験しました（笑）」

――実際に箱根を走って感じたことは？

「箱根マジックを経験しました（笑）。最初の5キロを14分2秒で入ったんです。何回か時計を見直しても間違っていないですし、全然キツくない。これが箱根マジックか、このままいけば区間新も余裕でいけるぞって思いました。でも、すぐに打ち砕かれましたね。8キロあたりでキツくなって、『あと15キロもある、やばいな』とちょっと焦ったんですけど、沿道の応援や監督の声掛けのおかげで、なんとか踏ん張ることができました。この時、沿道の応援は本当に力になることを痛感しましたね。翌年、コロナ禍の影響で無観客になって、9区の給水で少しだけ走ったんですが、すごく静かでした。これは走る選手からするとキツい。早くいつもの箱根駅伝が戻ってきてほしいと思います」

欠場となった前回箱根駅伝は、9区の給水役を務めた ©Yuki Suenaga

　今年の青学大は、駒澤大とともに優勝候補の筆頭に挙げられている。春に卒業した神林さんは、「まさかここまで強くなるとは」と驚きを隠せない様子だ。

――今年の青学大は、エントリ―16名全員が28分台の選手、持ちタイムでズバ抜けています。

「自分が1年の時、監督がいつかは16人のメンバーを（5000m）13分台と（1万m）28分台の選手で揃えたいと言っていたんです。当時はまだ8人ぐらいでしたし、自分たちの下の代は『大丈夫かな』って心配していたので、本当にびっくりです」

――下の代は、かなり心配だったのですか。

「今の4年生の飯田（貴之）は、1年の時から箱根を走っていますけど、ものすごく強くなったかといえば、むしろ伸び悩んでいた。しかも自分たちの代の吉田のようなチームの核となる選手が飯田たちの学年にはいませんでした。カラー的にもみんな、おとなしくて、当時の2年生、今の3年生がすごく勢いがあって、強かった。だから4年の肩身が狭くなり、チーム作りが難しくなるんじゃないかと。でも、杞憂に終わりました（笑）。それは、近藤幸太郎（3年）の存在がすごく大きかったと思います」

――近藤選手の存在がチームにどう影響したのでしょうか。

「近藤は、過去最強だと思います。ここまでコンスタントに高いレベルで結果を出し続けるのは相当なことですよ。田澤廉選手（駒大3年）の影に隠れていますけど、彼と勝負できるポテンシャルを持っています。そういう選手が3年にいるのは、4年生にとって間違いなくプラスです。やっぱり3年生に任せるわけにはいかないと思うんですよ。そういう気持ちを全日本で高橋（勇輝・4年）が見せてくれて、区間賞を取りましたからね」

【次ページ】　神林さんの2022年箱根駅伝 “展開予想”