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〈緊急独占〉北京五輪を逃した高橋&村元組のコーチが明かす“選考方法への本音”…夢は叶わなかったが、2人は進化していく
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/12/28 17:08
全日本選手権では2位となり、北京五輪の代表入りを逃した村元哉中&高橋大輔組
ズエヴァコーチ「納得できないんです」
ISU世界ランキングの決め方は、過去3シーズンのポイントになる大会の成績で決められる。今季2021/2022と2020/2021は100%、2019/2020は70%で、それぞれの大会の順位によって与えられたポイントの合計で計算されるのだ。
だが昨シーズンはパンデミックで国境を越えての移動が極度に制限されたため、ISUは(国内大会形式で開催された)GPシリーズも、キャンセルを免れたわずかなチャレンジャーシリーズも、世界ランキングのポイント対象にはしないことを決定した。
結成して2シーズン目の村元&高橋組は、2019/2020シーズンはまだ活動していないためポイントはゼロ。そして昨シーズンはパンデミックで、ポイントを稼ぐことができなかったのでやはりゼロ。今シーズンのNHK杯と2位だったワルシャワ杯のポイントを合わせて世界で50位。対する小松原組は36位。選考基準4つのうちの1つは、キャリアのより長い小松原組の方が上に来ることは、最初からわかりきっていたことだった。
「パンデミックという新しい現実に合わせて、ISUは調整を行いました。それなのに日本の連盟が調整をしなかった、というのは納得できないんです」とズエヴァコーチ。
ジャッジに不満はないが、問題は“選考方法”
もちろん全日本選手権という、全国で生中継されていた大舞台で転倒があったことのインパクトは大きかった。転んだのだからオリンピックの代表を逃しても仕方ない、と演技を見ていた大方の人々は感じただろう。
ズエヴァコーチは自分が同行できず、隔離期間も含めて彼らは3週間コーチなしでトレーニングしていたという事情はあるにせよ、ミスはミスであり、ジャッジの採点に不満はないという。
だが残りの2項目のデータを見ると、今シーズンの世界ランキングは村元&高橋が20位、小松原組が48位で2組の間には27組入っている。このスポーツを見てきた人なら、アイスダンスで上位にいる組を一組でも抜くことがどれほど難しいか理解している。二組の間に27組いる、というのは決して小さな数字ではない。そして最高スコアは村元&高橋が190.16(ワルシャワ杯)で小松原組は172.20(NHK杯)と、同じ大会ではないにせよ18ポイント近い差があった。
それでも最初からどちらが上に来るかわかっていたISU世界ランキングと、1.86ポイント差で決まった全日本選手権の結果で代表が選考された。日本スケート連盟の強化部長、竹内洋輔氏は「点数も拮抗していたということで、さまざまな議論がなされた。であれば、最後は今回のトータルの競技力というところで、全日本チャンピオンを選出した」と説明したが、シーズン最高スコアが約18ポイント、直接対決したNHK杯でも7.30のポイント差というのは小さな点差ではない。拮抗していたのは、この全日本のみである。
また村元と高橋は、結成2年にしてチャレンジャーシリーズのメダルを取って来るという結果も出した。選考委員会の密室の中でどのような話し合いが行われたのか知るすべはないが、ごく客観的に見て、当初日本スケート連盟が発表していた「4項目から総合的に判断する」という選考方法に沿っていたとは、とても言えないのではないだろうか。