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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
朝倉海「人生で初めて好きになったのが格闘技」目標のない普通の地方青年が“RIZINのトップ”にのし上がるまで《独占インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakashi Shimizu
posted2021/12/30 17:11
RIZINトップ選手として活躍する朝倉海。大晦日にはバンタム級日本トーナメントに登場する
「人生の中で初めて好きになって、夢になったのが格闘技だった」
――入口という意味では「なんかネットでケンカしてんなあ」で興味を持ってもらってもいいと。
朝倉 それも必要だと思いますよ。お互いが「頑張りましょう」、「いい試合しましょう」っていう試合ってそんなに面白くない。それはそれでいいんですけれど、そこまで勝敗が気にならないんじゃないかなと。「負けた人どうなっちゃうんだろう?」っていうのも格闘技の面白さではあるので。そう思わせる過程も大事ですね。格闘技が盛り上がってほしいですし。
――海選手はよく「格闘技界を盛り上げたい」といいますよね。この業界が長く続いてほしいと。つまり自分が強くなって、勝って有名になって、いいキャリアをまっとうできればいいというだけではないということですよね。周りも含めて上がってほしいという。
朝倉 やっぱり格闘技が好きですから。僕はもともと夢とか目標っていうものがずっとなくて。人生の中で初めて好きになって、夢になったのが格闘技だったので。その格闘技がもっとメジャーになってほしいというか。それに自分が格闘技をやっていると、格闘家の大変さっていうのを身にしみて感じるんですよ。本当に大変なことで、命の危険もあるじゃないですか。スポーツの中で一番危険だと思うし、そのリスクを背負ってやってる選手に対してもっと報われてほしいという感覚ですね。格闘技をやる人口も見る人口ももっと増やしたい。
10代の頃はバレー、勉強にガソリンスタンドのアルバイト
――子供の頃の夢というのも特になかったですか。
朝倉 なかったです。小学生の時は相撲を習ってたんで相撲取りになりたかったんですけど、体格に恵まれなくて。そうなると特に何もないんですよ。
――10代前半とかはどんな感じで過ごしてましたか。
朝倉 中学校の頃はバレーボール部に入ってたので部活やって、あとはけっこう勉強もして。高校入ってからはアルバイトに没頭してました。ガソリンスタンドで働いてましたね。
――お兄さんに誘われて(格闘技を)始めてみて、目標とか夢を持つ感覚ってどうでしたか。
朝倉 本当にやりたいことがなくて、ただ安定した企業に入社できればいいやと思って勉強もある程度して、就職先も決めて、ただただ目標のない普通の生活を送ってたんですけど、そんな中で兄貴に誘われて格闘技をやって、毎日が楽しくなったというか。「こんな楽しいことあったんだ」っていう。僕はけっこう飽き性なんですよ。スポーツも、ある程度やるとできるようになるんです。で、ある程度で満足しちゃってやめる。でも格闘技、特に総合格闘技は覚えることがたくさんあるじゃないですか。その難しさが面白さに変わっていって。それとスリルですよね。他では味わえない感覚がある。それがクセになりました。毎日楽しくて「この世界で上を目指したい」と。