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ラプターズ渡邊雄太を叱咤激励するバンブリート、出会いは7年前のクリスマス「僕らを苦しめていたやせっぽちのキッド」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2021/12/29 11:04
ジョージワシントン大時代の渡邊雄太にとって転機になった試合が、14年12月25日ウィチタステイト大との一戦だった。対戦相手にいたバンブリートとは現在チームメイト
バンブリートは、渡邊が最初にラプターズに加わった昨季から、チームのフロントやコーチ陣が渡邊のプレーを気に入っていたことを知っていた。ただ、昨季は渡邊自身がコートに立つと遠慮がちなことが多く、力を出し切れていないことが多かった。もっと思い切りよくプレーすれば、さらにいいプレーができる。そう思い、コート上では時に罵声のような厳しい言葉をかけ、叱咤激励するようになった。
たとえば、今季、開幕前の故障で欠場が続いていた渡邊が、ようやく復帰した11月24日のグリズリーズ戦後も、渡邊の復帰について聞かれ、こんなことを言っていた。
「すばらしかった。彼が戻ってきてくれて嬉しい。彼が、どれだけハードにプレーするか忘れていたよ。レイアップを2回外したときには罵ったけれどね。でも、僕らはそういう関係を築くことができているんだ」
渡邊も、「そうやって言わなきゃいけない部分はしっかりと口に出して言える彼のリーダーシップっていうのは、本当にすばらしい」と、バンブリートの率直な意見を歓迎する。そして、どれだけ厳しいことを言われても、言い返すことなく、真摯に受け止めているのだという。
実際、バンブリートの叱咤激励は、期待の裏返しでもある。厳しく言う一方で、「ユウタはとても才能ある選手だ」「彼はこのチームで、控えから出て大きな役割を担う選手になれると思っている」と、期待をかける。
大学の試合の話になったとき、バンブリートはこうも言っていた。
「おかしいのは今、僕はいつも彼に厳しいことを言っているわけだけれど、大学のときは彼にやられてしまったわけだからね」
負けず嫌いのバンブリートにとっては、悔しい思い出には違いない。と同時に、大学1年で、ランキング校相手に見せたようなアグレッシブさこそが、渡邊がさらに才能を開花させる鍵だと再確認したのではないだろうか。そして、NBAの舞台でも、それが当たり前になるように、バンブリートはこれからも渡邊を罵倒し、トラッシュトークを続ける。